オーストラリアの診察室から
オーストラリアの物価上昇問題
オーストラリアでは物価上昇が続いています。ほとんどの物の値段が上昇していますが特に電気代、家賃、食費など、生活必需品の値上がりが顕著です。これに対応するため、政府は予算案で電気代の補助金を発表しました。
また、政府は最低賃金の引き上げを発表し、今年の7月より3.75%上昇し、時給24.1オーストラリアドルになります。これは従業員にとっては喜ばしいニュースですが、特にスモールビジネスのオーナーにとっては大きな負担となります。多くのオーナーたちは、従業員の最低賃金が上がることは理解できるものの、ビジネスを継続させるために結局商品やサービスの値段を上げるしかないという現実に直面しています。そのため、賃金の上昇と物価の上昇が相互に影響し合うサイクルが続く見通しです。
さらに、オーストラリアのいくつかの都市は、世界で家を購入するのが最も困難な都市の上位にランクインしています。物価上昇の問題は失業中だったり一人親家庭で政府の生活補助を受けている人々にとって特に深刻です。毎月の家賃、食費、交通費など、必需経費を差し引くと、ほとんど何も残らない状態になっています。これには電気代や医療費などの追加費用が含まれていません。
画像:Pixabay_geralt
生活が大変な人々が多数居る一方、依然として多くのオーストラリア人は海外旅行に出かけるなどの散財を続けています。このため、オーストラリア中央銀行はインフレが依然として抑制されていないと判断し、金利を下げる決定を見送りました。
オーストラリアの物価上昇は今後もしばらく続くと見られています。政府と中央銀行は、物価上昇を抑えるためのさらなる対策を講じる必要があります。生活費の負担が増加する中で、多くの家庭は日々の生活に苦しんでおり、特に低所得層や生活補助を受けている家庭に対する経済支援が求められています。
今後、オーストラリア経済がどのように展開していくのか、政府の政策や国際的な経済動向が大きな影響を与えるでしょう。物価上昇と賃金上昇のバランスを取ることは容易ではありませんが、持続可能な経済成長を実現するためには不可欠な要素です。
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog