オーストラリアの診察室から
ロスリバーウイルス感染
クイーンズランド州の多くの場所で大雨や高温の影響で蚊が大量発生しています。ブリスベンではマラリアやデング熱などは通常みられませんが、蚊の大量発生によりロスリバーウイルス感染は増えています。州の保険機関が捕まえ検査した多くの蚊からロスリバーウイルスが検出されています。
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日本ではほとんどなじみのない病気ですが、ロスリバーウイルス感染はオーストラリア、パプアニューギニア、ソロモン諸島で特有にみられる感染症です。ほとんどの感染は南半球の夏および秋に発生します。2011年にオーストラリアで5,099人の患者が発生し、特に西オーストラリア州とクイーンズランド州で多くの症例が報告されました。
ロスリバーウイルス感染は蚊の刺咬によって媒介されます。ヒトからヒトへの感染はありません。70〜90%の場合はまったく症状がないかあっても軽度の症状のみです。典型的な症状には関節痛、倦怠感、筋肉痛、発疹、発熱、頭痛などです。
今回はクイーンズランド州では東海岸沿いのマッカイ、バンダバーグ、ブリスベン、ゴールドコーストでのリスクが高まっていると伝えられています。
倦怠感や関節痛が続く人は医療機関でロスリバーウイルス感染の血液検査が受けられます。場合によって関節痛や倦怠感が数か月続く場合もあります。残念ながら特別な治療法はなく、対症療法が中心となりますが、症状の原因がわかることでスケジュール管理や症状への対処はしやすくなります。
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他の蚊による感染症を防ぐのと一同様に虫よけスプレー、長袖の服装、蚊の発生が多い時間の外出を避けるなどして蚊に刺されないようにするのが一番の予防策になります。
ブリスベンを含むクイーンズランド州の東海岸ではまだ雨と高温が続くようなので、蚊へ対策が引き続き必要です。
参考
https://www.abc.net.au/news/2024-02-12/ross-river-virus-spike-moquitoes-queensland-heavy-rain-flooding/103456046
https://www.health.qld.gov.au/cdcg/index/ross-river-virus-infection
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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