オーストラリアの診察室から
オプタスのネットワーク障害
11月9日、オーストラリアの通信大手であるオプタスのネットワークに障害が発生し、国全体で通信接続が中断されました。障害は13〜14時間続き、1,000万人以上の人々や多数の企業・公共機関に影響を与えました。
オーストラリアには複数の通信会社がありますが、ほとんどの企業がオプタスかテレスタの通信ネットワークを基盤としています。今回の障害で様々な問題が浮き彫りになりました。オーストラリアではキャッシュレス決済が推進されていますが、オプタスのネットワークに依存する決済端末は機能が停止しました。これにより多くの飲食店やビジネスが影響を受けました。加えて、電話やメールもオプタスのネットワーク経由では送信できず、緊急連絡を受け取れない状況も生じました。さらに、病院やGPクリニックの電子カルテもインターネット回線に依存しており、医療機関にも大きな影響が出ました。通信状況が悪い場合でも、警察や消防への緊急通報ができるはずでしたが、それすらできない状況も生じました。
画像:shutterstock_2159105393
障害自体に加えて、オプタスの対応にも大きな批判が集まっています。初期段階では障害の原因や復旧計画についての情報が乏しかった上、CEOからの説明も十分ではありませんでした。被害への対応も不十分で、顧客に対し追加データプランなどを無料提供するなどの措置が取られましたが、多くの人々が納得していません。
画像:shutterstock_95440552
オーストラリア政府もこの障害を重く見ており、オプタスは政府の調査委員会からの質問を受けました。その結果CEOは責任を取って辞任すると表明しました。
オプタスはネットワークのルーティングが障害の原因であると説明しています。問題はその後発生していませんが、今回の出来事を通じて携帯電話やインターネット通信の重要性が改めて認識されました。これらの通信インフラは既に日常生活に欠かせぬものとなっており、これからはより安定した通信インフラの構築が求められるでしょう。
参考
https://www.abc.net.au/news/2023-11-09/how-the-optus-outage-played-out/103079768
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog