ルワンダのカリツィエから見る日々のあれこれ
働くという事。仕事という概念。
ルワンダには日本であまり見かけることのない職業がいろいろ存在する。
・後ろに人を乗せる自転車タクシーやバイクタクシー
鉄道がないルワンダでは、公共交通手段がバスに限られており、そのバスも路線が少ない。一般のタクシーは高額であるため、この自転車、バイクタクシーは割とお手頃で住民にとって重要な役割を果たしている。
日本では携帯電話の月々の使用料金は後払いで銀行からの引き落としの場合が多いのではないだろうか。ルワンダでは全て前払い。そして銀行口座の保有率が少ないため、誰でもいつでも通話や通信にアクセスできるように、各携帯キャリアの代理人が街のあらゆる場所に点在して、サービスを提供する。方法としてはチャージしたい金額と自分の電話番号を教え、お金を支払うとその場でその分を代わりにチャージしてくれ、そこからすぐに使用できるようになる。100ルワンダフラン(約10円)からチャージができ、学生には割安のパックがあったりして、このワンコインでも17分ほどの通話ができる。街中では100mも歩けば次の人に遭遇するほどこのような代理人が道に立ったり、パラソルの下に椅子を置いて座って仕事をしている。
・ピーナッツやゆで卵の歩き売り
最近繁華街などではあまり見られなくなったが、大通りから細い道に入ったり、住宅街のようなカリツィエでは透明のフタ付きのバケツを持って食べ物の歩き売りをする人がいる。炒ったピーナッツに塩がふられているものを1スプーンいくらかで売られていたり、ゆで卵も見かけることが多い。
・荷物運び人
市場に行くと「荷物運びはいらないかい?」とたくさんの人がよってくる。市場でたくさん買い物をして、車に運ぶまでそれらの荷物を代わりに運んでくれる人たちだ。市場以外でも、このような人はどんなカリツィエにもいて、大きな買い物をするとお店の人がさっと呼んでくれて運んでくれたりする。水道水が断水になった時に水がある地域まで行って水を代わりに運んでくれるのもこの人たちである。
このように人々が行き交う街の様子を見ていると、いろんな人たちが様々な仕事をしている光景が目に入ってきてとても興味深い。
ルワンダに住み始めた当初、ルワンダ人はどのような基準で自分の仕事を決めるのかなと気になったことがあった。農業に従事している人口が大部分を占め、産業に乏しいルワンダでは専門的な知識や技術を身につけてもその後の就職先を見つける事がとても難しく、それが今でも社会の課題となっている。
そんな中でも、当時住んでいた地方の地域では、何もないところから少しずつ段階を踏んで、自分にできる仕事を探して生きるルワンダ人の若者たちをたくさん見てきた。
当時、毎日のように携帯の通話料金のチャージをお願いしていた、20代の青年もその一人。オシャレ好きでいつも彼のこだわりのストリートファッションで市場の近くに立って仕事をする。そんな彼から想像もしなかったが、仲良くなって家に遊びに行った時に、実は孤児だということを話してくれた。この携帯会社の代理人になるには始めある程度まとまったお金を持っていないと始められないのだが、小さな頃から両親がおらず生活が大変だった彼は、生活費を賄うためにピーナッツの歩き売りから少しずつお金を貯めてここまで至ったという。
また村でよく見かける自転車タクシーの人たちも同じような背景をもつ。初めは自転車を持つボスの下で働き始め、毎日稼いだうちのいくらかをそのボスに支払い、余った分が自分の取り分となる。人によってはボスとの間で、何年間働き続けたら自転車を自分に受け渡してもらえるという契約を結ぶこともある。そうやって少しずつ稼いで、貯めたお金で次はバイクタクシーをやるという友人をたくさん見てきた。
このようにルワンダでは常に今の仕事よりも良い仕事を探して動いている人が多く、仕事を変えることに対して不安というよりはポジティブな気持ちで前に進んでいる人が多い印象だ。一口に仕事と言ってもいろんな形態の仕事があり、またいろんな働き方があって、そんな自分になかった新しい考えを見るたびに、自分の概念が少しずつ変化していくのである。
著者プロフィール
- 大江里佳
ルワンダキガリ在住。2014年に青年海外協力隊としてルワンダに渡ったことをきっかけに、この土地の人々の生きる力と地域の強い結びつきに惹かれる。帰国後も単独でルワンダに戻り、現地NPO職員を経て、2019年に現地でコンサルタント・現地語通訳等の会社を起業。一方で、現地アフロダンスチームに所属しダンス活動も行う。2018年から同棲を始めたルワンダ人パートナーとの間に子を授かり、2020年に出産。現在家族3人でキガリで暮す。
Webサイト: URUZIGANGO
Twitter: @satoka817