ルワンダのカリツィエから見る日々のあれこれ
アフリカルーツのアフロダンス。そしてルワンダでのアフロダンスの立ち位置とは。
新年を迎え、ルワンダではコロナ感染者が少しずつ増加していき、特に私の住んでいる首都キガリでは1日に100人前後の感染者まで数が伸びていったことから、先週よりキガリのみロックダウンが住民に言い渡され、昨年の3月以来2度目のロックダウン期間に入っている。不要不急の移動は禁止され、必要な外出の際には警察へ外出許可の届けを出すこととなっている。
私が住んでいる地域は、現地の人が住んでいる住宅地であるので、実際に食材の買い物に近所へと出かけた時には、同じように買い物に来た人が道をポツポツと歩いており、そのような基本の日常生活に必要な外出には許可を取っているようには感じなかった。しかし、普段人で賑やかな道が一変して閑散としている様子がまたロックダウンに戻ったんだなと実感させられた。
このコロナ感染拡大は、ここルワンダのアーティストたちにも大きな影響を与えている。アーティストの中でもエンターテイメント業界で生きているダンサーたちは、このロックダウンによって収入源であるダンスパフォーマンスやコンテスト等のイベントが開催禁止になり、歌手のPVのバックダンサーの仕事も激減。ダンスを教えていたスタジオ等もお休みに。以前はダンサー仲間で集まって練習をしたり、子供たちを集めて教えていた日常から、ロックダウンに入り、ダンサー各々自宅で練習をするという状況に変わっていった。
そんな中でもこの2度目のロックダウンに入る前までは、夜間の移動禁止(夜8:00以降)の制限はあったものの、少しずつ活動の制限が緩和されていって、密を避け注意を払った上での活動は許可されてきており、ダンサーも個人や小規模のグループで活動を始めていたところであった。私もこのロックダウンに入る前に、今年はダンス活動を去年よりも積極的にやっていこうと意気込んで、数本ダンス動画を撮影していた。
今回は私がここルワンダに来て出会ったアフロダンスというのダンスジャンルについてのお話をしたいと思う。
日本に日本舞踊や民謡があるようにアフリカの国々にもそれぞれの伝統文化としての舞踊が存在する。これらは昔々から伝統的に住民によって踊られてきたもので、現在でもその国の大切な文化として引き継がれている。ルワンダにもこの伝統ダンスがもちろん存在し、結婚式や式典なようなお祝いの場でこのダンスが踊られることが多く、ダンスの動きの中にはルワンダ人にとって大きな意味を持つ牛の角を表現したものや、他の動物や生活の中での動きを表しているものがみられる。
このようにアフリカにはたくさんの国が存在するが、その国ごとに、もっと言えば一つの国の中でもそれぞれの民族ごとに彼らの伝統舞踊が存在するのである。アフリカのこれらのダンスは日本人の私から見るとリズムの取り方や体の動かし方、また気持ちの表現の仕方がとても独特で魅力的なものである。
そしてこれを前提とした上で、それとはまた別に『アフロダンス』というものが存在する。これは先ほどの伝統ダンスに比べて、現代の踊りとして人々の生活の中でもっと身近にある、アフリカのストリートダンスのようなものだ。現代の流行りのアフリカ独特のビートの曲に合わせて踊られるもので、その中には前述した伝統ダンスが基になって発展してできたものもある。なのでもちろんアフロダンスといっても、それぞれの国でスタイルが異なり、現在進行形でどんどん発展しているダンスジャンルである。
元々はそれぞれの国で作られたダンススタイルごとに踊られていたが、最近はいろんなスタイルや要素・動きを混ぜて、アフロダンスと称され、アフリカだけではなく欧米でも盛んに踊られているダンスジャンルの一つとなっている。
それでは、ルワンダではこのアフロダンスの立ち位置はどうなのか。
ルワンダは先ほど説明したようにルワンダ独自の伝統ダンスが存在するが、実はルワンダから生まれた特有のアフロダンスというものはまだ生まれていない。なので一般的にアフロダンスと呼ばれているジャンルのいろんな要素を取り入れて、アフロダンスとして踊っているのがルワンダのアフロダンサーの傾向である。自国から生まれたスタイルではないにしても、やはりそこはアフリカ人でその独特のリズム感やフィーリングの表現をみると、やっぱりこれが彼らの踊りだと感じさせられる。
外出しなくなって、直接彼のダンスを見る機会が減ったけど、SNSで彼のダンスを見るたびにダンサーとしての彼を本当に尊敬するし、心からかっこいいと思う。彼の想いやバックグラウンドを知っているからこそ、このダンスの意味がより重く伝わってくる。そしてみてて本当に気持ちいい。 pic.twitter.com/KELZ0yTe6F
-- 大江里佳ルワンダ (@satoka817) July 7, 2020
一方で、ルワンダのアフロダンサーの中には、ルワンダ独自の現代のアフロダンススタイルが未だなく、自分の国や文化をリスペクトしているにも関わらず、ダンスは他のアフリカの国から生まれたものを踊っていることに対して、悔しさやもっと自国をレペゼンしたい気持ちを持つ人がいることも確かだ。
また近年、移民したアフリカ系の人々の影響で、特にヨーロッパではこのアフロダンスがとても盛んになり、ダンスシーンが拡大している。インスタグラムを始めとしたソーシャルメディアが発展し、ルワンダの若者もこのアフロダンスの欧米への広がり方を見て、その影響を強く感じている。アフリカルーツのダンスが広がっていくことへの嬉しさと、その反面でルーツはアフリカにあるのにその文化が他のところで、またアフリカ人以外のところで発展していっている様子に寂しさや悔しさを感じる発言も多々聞かれるのである。
そんないろいろな感情の中で、ダンサーを職業として生きていこうと頑張っているルワンダダンサーたちだが、では彼らの仕事や活動というものはどんなものなのだろうか。これについては次回お話ししていきたいと思う。
著者プロフィール
- 大江里佳
ルワンダキガリ在住。2014年に青年海外協力隊としてルワンダに渡ったことをきっかけに、この土地の人々の生きる力と地域の強い結びつきに惹かれる。帰国後も単独でルワンダに戻り、現地NPO職員を経て、2019年に現地でコンサルタント・現地語通訳等の会社を起業。一方で、現地アフロダンスチームに所属しダンス活動も行う。2018年から同棲を始めたルワンダ人パートナーとの間に子を授かり、2020年に出産。現在家族3人でキガリで暮す。
Webサイト: URUZIGANGO
Twitter: @satoka817