南仏の国際機関から考える
新型肺炎コロナ第二波とフランス人の生き方
バカンスシーズンが終わり9月頭から学校のはじまったフランスでは、日本国内でも報道されているように、9月中旬からパリやマルセイユ等の都市を皮切りに新型肺炎感染者の数が増加してきました。
一日あたりの報告された感染者数が1万数千人を越えることとなり、南仏の大都市マルセイユを中心とした「エクス=マルセイユ都市圏」においては、改めて限定的な「飲食店封鎖」が実施されることになりました。
仏マルセイユ飲食店に閉鎖命令、感染再燃の欧州各地で規制再導入
【9月24日 AFP】フランス政府は23日、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、国内第2の都市マルセイユ(Marseille)を「最大警戒」地区に指定し、バーやレストランなどの閉鎖を命じた。各地で感染が再燃している欧州では、累計感染者数が500万人を超えた。
フランスでは、24日だけで1万3000人超の新規感染者と800人の入院が報告された。オリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は、仏本土で現在唯一の「最大警戒」地区とされたマルセイユ市内の飲食店に閉鎖命令を出した。 (以下略)
私の勤務するITER機構は、ちょうどこの「エクス=マルセイユ都市圏」の周縁部北側にあり、エクサンプロバンスにも多くの職員が住んでいることから、本施策の影響を受けていました。エクサンプロバンスは観光地としてだけでなく、学生の街としても有名です。通常であれば、学校が始まり学生が街に戻り、中心部は日々バーやカフェで賑わう所ですが、今回の新型肺炎の感染予防には少々不都合な様相です。
その後、マルセイユに続いてパリでも10月5日にバーなどの営業停止命令(2週間見込み)が出ることになりました。
パリ、コロナ警戒レベル「最高」に バーとカフェ閉鎖へ
【10月5日 AFP】(更新)仏パリ首都圏で5日、新型コロナウイルスの警戒レベルが「最高」に引き上げられ、翌6日から2週間にわたりバーやカフェの営業が禁止された。
フランスでは3日、1日の新規感染者数が、大規模検査が始まって以降最多となる1万6972人に増加。パリ警察当局は記者会見で、感染拡大を食い止めるためバーやカフェを閉鎖するとした一方で、レストランに対しては安全対策を取ることを条件として引き続き営業を許可するとした。
こうしたフランス政府の第二波に対する新しい対策案(制限)をみると、改めて春のような外出制限(ロックダウン)を実施する事を避けながら、如何に封じ込めるのかを模索していることがわかります。
おそらく、現在までにわかってきたことから感染拡大防止には、「(自宅以外の)外における飲食を伴う複数人での社交的集まり」を制限することが最も有効であるとフランス政府が考えていると思われます。
この点について、フランスのジェラール・ダーマナン内務相がラジオ番組に出演し、
「フランス人は飲んだり食べたりして、生きて、笑って、お互いにキスするのが好きだ」
と発言したという報道がありましたが、このポイントこそが「フランス文化」や「フランス人の生き方」そのものであることから、マルセイユでは指示を守らず営業を続ける飲食店経営者が複数報告されたり、パリでは業界団体の抗議デモ等が行われている模様です。
当然、経済的便益の観点からの抗議運動であり、日本でもそうですが新型肺炎に対するマクロ経済保障の観点など、「何を優先で考えるか」「どれくらいの時間軸で考えるのか」等、様々な意見があると思います。
しかしフランスに移住してきてまだ2年足らずとはいえ、私自身がこちらに来て認識しはじめた「フランス文化」「フランス人」というものを振り返れば振り返るほど、上述の内務省の発言の持つ重みを感じると共にこの国の持つ気質「人生をエンジョイする」というものに対する愛着が少しづつ出てきたように思います。
*なお、私の住む田舎街は「エクス=マルセイユ都市圏」の圏外にあり、飲食店の営業等は通常運行であり、先週の金曜日も多くのお客さんで賑わっていました。