パスタな国の人々
チーズ界のロールスロイスを食べる
明けましておめでとうございます。今回は丑年にちなんで「チーズ」、しかも「チーズ界のロールスロイス」「幻のチーズ」なんて異名をとるすごいチーズの話です。
イタリアのチーズは主に牛のミルク、そしてヤギ、ヒツジ、水牛のミルクで作られている。世界で誰もが知っているイタリアチーズといえば、まずは「パルミジャーノ」(正確にはパルミジャーノ・レジャーノ)。世界中に大量に輸出されていて、2019年の総生産量は375万個(150,000トン)を記録しているほど。そして「ゴルゴンゾーラ」「モッツァレラ」あたりが、世界中で最もメジャーなイタリアンチーズだ。パルミジャーノとゴルゴンゾーラは北イタリアで牛のミルクから、一方、モッツァレラは南イタリアのカンパーニャ州(州都ナポリ)の名産で、元来は水牛のミルクで作られるのだが、水牛のミルクは生産量が少ないので、牛乳製のモッツアレラがイタリア全国で、そして世界で流通している。
そんな超メジャーチーズたちがある一方で、イタリア各地方で、それぞれの気候や材料の特徴を生かしたチーズが伝統的に作られている。その数、なんと400種類以上と言われている。その中でも私の住んでいるピエモンテ州は、州の名前からして山の足元(ピエデ=足 モンテ=山)と言うだけに、アルプスのお膝元で牧草地に適した場所が多く、チーズの生産がとても盛んだ。そしてクオリティも高い。DOP(保護指定原産地表示。EUが定める原材料や生産方法、生産地に従った作り方をされていると言うクオリティの保証のようなもの)に指定されているチーズが全イタリアに50あるうち、ピエモンテ州が7つを占めている(州をまたいで作っているものも含めると10)。イタリアは全部で20州なので、かなり多いことがわかる。
チーズ文化のクオリティが高いそのピエモンテで、DOPの枠に収まらず、8世紀の昔からコツコツと作り続けられているすごいチーズがある。それが「チーズ界のロールスロイス」とか「幻のチーズ」と呼ばれる「ベッテルマット」だ。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。