米国大学で戦う学生アスリートの挑戦
日本人学生アスリートが実際にBlack Lives Matter問題に取り組んで感じたこと。
今日はアメリカの大学で学生アスリートとして活動する私が、チームでBlack Lives Matterにどう向き合ったかについて書いていきたいと思います。
私は高校卒業後、アメリカに渡米し、1年間語学学校に通った後、米国の大学に入学しました。決してアメリカの文化や政治に精通しているわけではないので、Black Lives Matter問題というセンシティブなトピックを書くか迷っていました。
ただ、実際にアメリカの学生アスリートは何を感じ、どんな行動をしているのか。
人種の多様性を受け入れるための長い歴史の中で、いまアメリカの学生たちはどんな価値観を持ち、私自身がどう感じているのか。
現地で経験しているからこそ、伝えられる内容であると思い、書くことを決めました。
表現の仕方や言葉の使い方で、それは間違っていると、ご指摘を頂くかもしれませんが、それはそれでしっかり受け止めたいと思います。
2020年5月25日
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
アメリカでは、新型コロナウイルスのニュースと同じくらい人種差別問題が大きく取り上げられています。
それは、ミネソタ州のミネアポリスでGeorge Floyd (ジョージフロイド)さんが白人の警察官に首を押さえられ、殺害された事件がきっかけとなっています。
I can't breathe「息ができない」と
何度も主張しましたが、そのまま白人警察官に9分近くも首を押さえられ、結果的に呼吸ができずに、亡くなりました。
警察は当初、偽札使用の通報で駆けつけたみたいですが、George Floyd (ジョージフロイド)さんが指示に従わなかったから押さえつけた。と事件後に主張していました。
この事件をきっかけに、更に全米各地で"Black Lives Matter"のデモ活動が一気に広がりました。しかし、この事件とは別に、人種差別に関する事件は、数えきれないほど米国内で起こっています。その現場に対して、著名人のみならず大きな企業もSNSを通じてその重要性を発信しているのがアメリカの今の現状です。
私の大学でも一番影響力のあるfootball(アメリカンフットボール)チームが黒の服をきて、手を繋ぎ、学校内を歩き、"Unity"を示しました。
実際にチームに所属して様々な境遇のメンバーの意見を聞いていくと、人種差別は良くないから抗議の姿勢を示そう!という簡単な方法で解決できるような問題ではありませんでした。
なぜなら、政治に関することは意見が真っ二つに割れます。簡単に言えば、トランプ大統領を支持する側としない側と言えば分かりやすいのかもしれません。これは、育った家系やどこ出身なのか。なども関係しています。個人の意思だけではなく、家系の問題は思想の問題も含まれてしまうことを知りました。
The NWSL returned over the weekend with players kneeling in solidarity with the Black community and wearing Black Lives Matter t-shirts.
-- NBC Sports (@NBCSports) June 29, 2020
: @NWSL, @OnHerTurf pic.twitter.com/cwxLPvP7PF
例えば、米国の女子プロサッカーリーグNWSLでは、このように国歌斉唱の際に膝を突き、"Black Lives Matter"というウォーミングアップの服を着て、その重要性を示してきました。
米国人にとって、国歌斉唱の際に膝をつくということは、国や国旗への"disrespect(不敬)"を示していると捉えられます。
しかし、結果的には、多くの選手が人種差別に対する抗議行動として膝を突いていました。フロイドさんの事件後からは、更に多くのプロフェッショナルの試合でその行動が見られ事が増えた気がします。
人種差別に対する抗議行動によって罰せられたケースも存在しています。有名な例としては、NFLのColin Kaepernick (コリン キャパニック) 選手が国歌斉唱の際に膝を突き、これが問題となり、結局、解雇されてしまいました。
まだ先の話になるみたいですが、Netflix(ネットフリックス)で 『Colin in Black & White(コリン イン ブラック&ホワイト)』の放送決定が発表されました。キャパニック選手がどうして人種問題に向き合うのか。などが描かれたストーリーみたいなので、興味のある方は是非チェックしてみて下さい。
人種差別にどう向き合ったか。
本題に戻りますが、私たちはこの膝をつくかつかない、そして"Black Lives Matter"と文字が入ったウォーミングアップシャツを着るか着ないかについてのミーティングが何度もありました。
その理由としては、先ほども述べましたが、政治に関する事は意見が真っ二つに割れてしまうからです。
チームとして、一つの意見にまとめたいのは山々だと思いますが、簡単に答えが出る問題ではありません。
だからこそ最後は、どっちを選んだにしろ、それは個人の尊重だからそれぞれがリスペクトしようという結論でした。
私個人の意見としては、私は"Black Lives Matter"と文字が入ったウォーミングアップシャツを着て、国歌斉唱の際には膝をつくことを決めました。
私もいろいろな人に意見も聞きましたし、母の意見も聞きました。決めた理由としては、私はチームにいる黒人の選手のサポートをしたいと思ったからです。
彼女たちは、他の部活の黒人の選手たちと一緒に、コミュニティーを作り、人種差別の問題に向き合っています。
私はどういう歴史が過去にあったかなどすべては計り知れませんが、アメリカの現状が平等ではないという事は分かります。
この現状を今すぐに変えることは難しいかもしれませんが、何か行動を起こすことによって今後の未来が変わるのであれば、私も力になりたいと心の底から思いました。
Black Lives Matter を通じて感じたこと。
私は今回の件を色々な角度から見て思ったことは、17歳〜22歳の大学生が真剣に社会や政治問題に向き合う、これがアメリカでは普通だということです。
例えば、日本の大学生の部活動の中で、人種差別問題に関して話し合い、行動をしているチームはかなり少ないのではないかと思います。
ただ、アメリカではほとんどのチームやコミュニティーで人種差別に関する話し合いが行われ、方針が発表され、行動が起こされていきます。
それが必ずしも良いことかは正直まだわかりません。ただ、その関心度と行動力の違いを身に染みて感じました。
このような場に立ち会え、アメリカにいたから学び、向き合い、私の人生の一つとして経験出来たことを誇りに思います。
社会問題をどう捉えて行動していくべきなのかまだまだ答えはわかりませんが、現地でその問題の根深さを知りました。サッカーだけではなく、文化や宗教についても引き続き学んでいきたいと思います。
長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
- 黒崎優香
1997年6月12日生まれ。福岡県出身、アメリカ在住の学生。4歳から兄の影響でサッカーを始め、サッカー強豪校の藤枝順心高校に進学し、キャプテンとして全国優勝を経験。その後、米国大学のサッカーに魅力を感じ、言葉の壁にぶつかるも渡米を決意。現在は、オクラホマ大学に通いながら、サッカー部に所属している。これからの女子サッカーを盛り上げることや学生アスリートの日常を発信することを目的にYouTubeチャンネルの開設準備中。
Twitter: @yuuka_kurosaki
Instagram: yuuka_kurosaki
note: https://note.com/yuuka_kurosaki