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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

イタリアのハロウィンとカトリック教会、諸聖人の祝日・死者の日

ローマ、チネチッタ・ワールドのハロウィン祭り 引用元:https://tg24.sky.it/lifestyle/2023/10/28/halloween-a-roma-eventi

 明日、10月31日はハロウィンです。今年もイタリアでは、当日、あるいは数日前から、北はアルプス山脈にあるヴァッレダオスタ州から南はシチリア島まで、全国各地でハロウィン関連の行事が催されています。冒頭の写真はローマ、チネチッタ・ワールドのハロウィン祭りです。興味がおありの方は、その祭りの広告である次の動画をご覧ください。

 イタリアで子供たちがハロウィンを祝ったり、クリスマスにはサンタクロースが贈り物を運んでくれると考えるようになったのは、近年のことです。現代におけるイタリアのハロウィンはいったいいつ頃からかと調べてみても、マスメディアでははっきり時を限定する記事は見当たらないのですが、今では大学生になった姪たちに尋ねてみると、二人がハロウィンを知って、変装してお菓子をもらいに近所の家を回り始めたのは、それぞれが、7歳、5歳のとき、今から約15年前のことだそうです。かつて二人が通っていた保育園や幼稚園では、ハロウィンについて何か聞いたり行事をしたりした記憶はないけれども、小学校のときに何かしたような記憶があるとのことです。自分たちがハロウィンを知ったのは、スーパーなど、店にハロウィンの飾りや商品があったり、ショーウィンドウに飾られているのを見たからではないかと思うと、昔のことを思い出しながら、そんなふうに語ってくれました。

 ハロウィンを祝うのは10月31日ですが、カトリック教会では、その翌日、11月1日を諸聖人の祝日、その翌々日、11月2日を死者の日、亡くなった人を追悼して祈りを唱える日としています。そして、カトリック教会では、ハロウィンをよからぬ風習とみなし、祭りやその慣習が広まりつつあることに危惧を示し、教徒に対して参加しないようにと呼びかけています。

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 寛容で、柔軟路線を行く「教皇フランシスコでさえハロウィンを好ましく思わず、死に関わる望ましくない文化を媒介するととらえている」と見出しを掲げた、2019年のイル・メッッサッジェーロ紙の記事(上の画像)には、教皇がハロウィンに反対する理由が次のように語られていて、これはカトリック教会の従来の姿勢を受け継ぐものです。

 「ハロウィン祭りは、世俗化が進んだ現代における商業主義の産物で、恐怖心を引き起こし熱狂させ、暴力的な霊や魔術、悪魔主義を呼び起こすことにつながります。その結果、悪霊だけをもてはやすことで、キリスト教の祝祭である諸聖人の祝日と死者の日の本来の意義が、根底から覆されてしまっています。」

 諸聖人の祝日と死者の日は、「わたしたちに地上の教会と天の教会、わたしたちと亡くなった大切な人たちとの絆を思い起こさせるものです。」「忘れずにお墓参りをして、お祈りをしてください。」

 さて、近年になって世俗化、教会離れが進んだと言われるイタリアですが、今も大半はカトリック教徒で、2021年の調査によると、イタリア人の82%がキリスト教徒で、うち79.7%がカトリック教徒であるとのことです。

 それでも、Euromedia Researchが今年10月23日に千人を対象に行った調査結果によると、イタリアでハロウィンを祝うことに賛成とする人が38.9%いて、対して反対する人は45.5パーセントとなっています。

 18歳から44歳までの回答者では、ハロウィンを祝うことに賛成する人が半数を占め、一方、45歳から64歳まででは48.4%、65歳以上では56.9%が反対と答えていて、歳が若くなるほど、ハロウィン祭りに対する抵抗が少なくなっているのが興味深いです。

 教会や教皇の言葉とは裏腹に、歴史的には、ケルト人の10月31日の祝いがもとで、カトリック教会が中世に諸聖人の祝日を11月1日と定めています。ケルト人の元旦は、古代には11月1日で、その前日の大晦日、10月31日には祖先の霊が現世に戻ると信じて祝っていたのですが、このケルト人の盛大な祭りが中世の初めになってもまだ祝われていたために、キリスト教化しようと、まずは中世にフランク王国で11月1日を諸聖人の祝日とし、その数世紀後、1475年に、すべての西方教会で、諸聖人の祝日が11月1日となったからです。このことについては、また別の機会に詳しくお話しできればと考えています。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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