イタリアの緑のこころ
春の味覚 野山で野生のアスパラガス狩り
「雨後の筍」という表現がありますが、雨が降ったあとに次々と出てくるのはタケノコだけではありません。雨が降ると、イタリア中部の春の野山では、野生のアスパラガス(asparagi selvatici)がよく育ちます。
今日も山の家に剪定に出かけた夫が、こんなにたくさんの野生のアスパラガスを収穫して帰ってきました。野生のアスパラガスはほっそりと長く緑色の場合が多いのですが、茶色っぽかったり、紫がかった色をしたりしている場合もあります。けれども、どんな色をしていても、炒めたりゆでたりして火を通すと、きれいな緑色になります。そうして、野生のアスパラガス特有の苦味があるのですが、この独特の苦味をおいしい春の味覚として楽しむ人が大勢います。卵といっしょに料理したり、パスタやリゾットの具にしたり、いろんな食べ方ができます。
慣れてくると、野山の木々の間や草むらを見ていると、すくっと伸びる野生のアスパラガスが自然に目に入ってくるようになるのですが、慣れないうちは、いえ、慣れてからも、アスパラガスの親木(下の写真)を見つけたら、その周囲をじっくり目を凝らしてみることが大切です。と言うのは、アスパラガスは、この親の木の近くに生えて育つからです。
竹の若芽であるタケノコが竹の近くに生えるように、野生のアスパラガスも、ペルージャの人がアスパラジャイオ(asparagiaio)と呼ぶ親木の若芽が育ったもので、アスパラジャイオの根は竹の根ほどには長く伸びないために、アスパラジャイオがあれば、そのすぐ近くにアスパラガスが見つかる可能性が高いのです。
野生のアスパラガスはかなりの高値で市場などで売られているのを購入することもできるのですが、自分たちで野山を歩き、探して見つけ、持って帰って食べるのが一番だと思います。キノコ同様、野生のアスパラガスも、近隣に住む人はどのあたりでよく収穫できるのかをよく知っていて、雨が降ったあとには早朝に出かけて摘んだりもしますので、その後に出かけても、もう摘み終わったあとの先が折り取られた茎だけを見ることになってしまう場合もあります。
わたしたちの山の家は、オリーブ園の周囲に塀はあるものの、山を歩く人は通れるようになっているため、時々家のすぐ近くでも野生のアスパラガスを収穫している人を見かけることがあって、困ったものだと思うことがあります。先週末も山の家で友人たちと過ごしていたら、野生のアスパラガスを探している親子連れがうちの前の道を通っていました。
春は野生のアスパラガスが育ち、鶏がたくさん卵を産む季節。おととし・去年とロックダウンで食べられなかった春の味を、ようやく楽しむことができました。
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) April 12, 2022
Frittata agli asparagi selvatici finalmente dopo due anni di primavera in lockdown! Buono il dono di primaverahttps://t.co/4vlAmXn4sr pic.twitter.com/gB3B8dyE9Y
実は今晩は、夫の後に山の家の周囲に行った義弟が、夫が摘んだアスパラガスのさらに倍の量を収穫して帰ってきました。山に生まれ育った夫たち兄弟は、幼い頃から野生のアスパラガスを見つけるのに慣れていることと思うのですが、春には出かけた先々で、先日の親子連れのように、親子で野生のアスパラガスを探す姿を見かけることも多く、こうして自然に親しみ、自ら摘んで家で食べる慣習が今後も受け継がれていくのだなとそんなことも思いました。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia