イタリアの緑のこころ
カウントダウンで新年を迎え祝うイタリア 年越し番組 今年はペルージャ中心街で収録
イタリアでは年越しの夜は、友人や家族などと大勢で集まって、にぎやかに食べて飲んで過ごし、新年の訪れをカウントダウンのあとに乾杯と共に祝う風習があります。感染下となるまで、わたしたちは例年はリミニ県の友人たちといっしょに、そうして新年を祝っていました。アドリア海岸では新年の訪れと共にいくつもの花火が打ち上げられ、リミニでは、音楽と共に人々が踊れる会場があちこちに設けられているのを見たこともあります。
イタリアでは大晦日の夜は、大勢で集まってにぎやかに過ごし、新年の訪れを乾杯して祝う風習があります。縁起を担いで食べられるものの筆頭はレンズ豆で、幸運とお金をもたらすとされています。この慣習は古代ローマに遡り、新年の初めに豆入りの皮袋を贈っていたそう。https://t.co/1iYz3g0Ui6
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) December 31, 2022
12月31日が聖シルヴェストロ(San Silvestro)を記念する日であることから、大晦日の夜を「聖シルヴェストロの夜」(notte di San Silvestro)と言い、この日の夕食に、新年を迎えるまで、「聖シルヴェストロの晩餐」(cenone di San Silvestro)と呼ばれるたくさんのごちそうを提供するレストランも多数あります。こうした店でも、また家で祝う場合でも、大晦日の晩に縁起を担いで食べられるものの筆頭はレンズ豆(lenticchie)で、幸運とお金をもたらすと言われています。この慣習は古代ローマ時代に遡り、新年の初めに友人にお金が入るよう祈って、レンズ豆が入った小さい皮袋を贈っていたことに由来するそうです。小さく丸いレンズ豆は、形が硬貨に似ているためです。また、豚肉のこってりした大きなソーセージ、コテキーノ(cotechino)やザンポーネ(zampone)も、豊かさを象徴すると考えられ、好んで食べられます。
ちなみにイタリアでは、18世紀までは元日(capodanno)をそれぞれの地方で異なる日に祝っていました。かつては元旦を、例えばベネチアでは3月1日、トスカーナでは3月25日、南イタリアとサルデーニャ島、シチリア島では9月1日に祝っていたとのことです。
日本のN H K総合にあたるイタリアのチャンネル、Rai 1では、大晦日の夜9時半過ぎから元旦の午前2時まで、年越し番組、『L'anno che verrà』が放映されます。数々の歌やショーのあとにカウントダウンで新年を迎えて乾杯をして祝い、その後も番組は続いていくのですが、イタリアで約35%の視聴率を誇る番組で、そういう意味でも日本の『紅白歌合戦』と『ゆく年くる年』を合わせたものに近いように思います。年の送り方と迎え方が、日本とイタリアでは大いに異なることが、番組の内容にもまた反映されてはいるのですけれども。
この年越し番組が今年はペルージャの中心広場から放映され、大勢の歌手たちが集まっておとといからリハーサルが始まったため、一昨日も昨日も広場にはたくさんの人々が詰めかけてリハーサルを視聴したそうで、昨晩の夜の地方ニュースでも、その様子が放映されていました。冒頭の画像はその地方ニュース、TGR Umbriaから引用したものです。ウンブリア州の州都、ペルージャからの放映ということで、ウンブリアのさまざまな町も紹介されるとのことで、今夜はうちで皆と食事やおしゃべりをしながらにはなりますが、番組を楽しみにしています。
ちなみに、「来る年」を意味する番組名、『L'anno che verrà』は歌手ルーチョ・ダッラ(Lucio Dalla)の同名の歌に由来していて、番組のテーマソングであり、番組の最初に歌われると共に、番組中のコマーシャルの終わりにも流れます。
今日は歌手、ルーチョ・ダッラ(Lucio Dalla)が亡くなってから10年目の記念日。彼の名曲『L'anno che verrà』をイタリア語の学習教材としたメルマガをご紹介。歌詞も心に響き美しいので、イタリア語には興味がないという人もよろしかったら日本語訳だけでもお読みください。https://t.co/SXV5gA9BFi
-- Naoko Ishii (@naoko_perugia) March 4, 2022
歌にはこうあります。(イタリア語原文は、上のリンク先のページをご覧ください。)
「古い年はもはや終わったといえるが、ここではまだ何かがうまく行かない。」
「けれど、テレビが新年は変化をもたらすだろうと言っていた。だから、誰もかれもが皆その変化を待ちわびているところだ。」
皆が待ちわびている平和、そして、戦争や感染に脅かされることなく、世界中の人が穏やかに暮らすことができる、そういう変化が起こる新年でありますように。
著者プロフィール
- 石井直子
イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。
ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia
Twitter:@naoko_perugia