Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
初のオージー王妃誕生!民間出身タスマニア女性がデンマーク王妃に
1月14日、デンマーク女王マルグレーテ2世の退位に伴い、新国王フレデリック10世が即位。フレデリック10世の妻であるメアリー妃は、「Queen Mary of Denmark(デンマーク王妃メアリー)」となった。
メアリー王妃が、オーストラリア人として初めてヨーロッパの伝統ある王室における「クイーン」の称号得たことで、豪国内はお祝いムードに包まれている。
突然、退位を発表したデンマークのマルグレーテ女王
昨年の大晦日、毎年行われる女王から国民に向けたメッセージで、(元)マルグレーテ女王は、在位52年となる2024年1月14日で女王の座を退き、長男であるフレデリック皇太子へ譲位すると発表。国民を驚かせた。
デンマークのマルグレーテ女王は、2022年に英国のエリザベス女王が死去した後、ヨーロッパで最も在位期間の長い君主であったが、83歳という自身の年齢と、近年の心疾患や膀胱癌の手術など健康状態への考慮もあり、譲位を決断したとみられるという。
オーストラリアの一般女性が欧州の王室入りすることになった『世紀の大ロマンス』
新国王となったフレデリック10世とメアリー王妃の出会いは、『世紀の大ロマンス』として、シドニーの人々の間では伝説のように語り継がれている。それは、あまりに衝撃的で驚くばかりだったからだ。
2人の出会いは、2000年のシドニー五輪に遡る。
タスマニア出身のメアリー・ドナルドソンさんは、当時、シドニーで働いていた。地元で行われているオリンピックで街中が盛り上がる中、同僚や友人らと共にダーリングハーバーにあるパブに立ち寄り、仲間たちとおしゃべりしながら飲んでいると、店内にいた男性が彼女に声をかけてきたという。2人は話が弾み、男性は自らを「フレッド」と名乗った。
そこから、2人は恋愛に発展。フレッドがデンマークの皇太子であることがわかったのは、しばらく経ってからのことだったそうだ。交際中は遠距離恋愛だったため、フレッド(当時、皇太子)はメアリーさんに会いに、お忍びで度々オーストラリアに来ていた。当時、お忍びのはずなのに、ニュースになったりしていたことをよく覚えている。
そして、2003年に婚約を発表。翌年の2004 年 5 月 14 日に、コペンハーゲン大聖堂で挙式し、メアリーさんは正式に皇太子妃となり、この度の新国王即位で王妃となった。まさしく、現代版シンデレラともいえるストーリーだ。
そんな、シドニーでの隠れたエピソードに、ちょっぴり親しみを覚えるデンマークの王室カップル。
今では4人の子供たちに恵まれ、円満な家庭を築いている。(・・・と言いたいところだが、昨年末にフレデリック新国王の不倫疑惑が発覚。即位の祝賀ムードに水を差す形水を差す格好となっていたようだ。パブでナンパした「フレッド」の影がちらつく...?)
2人の出会いの場、ダーリングハーバーにあるパブは祝賀ムード
2人の出会いの場となったのは、ダーリングハーバーの「Slip Inn」というパブだ。外観などは彼らが出会った頃と変わっていないが、提供している食事の内容などは当時と異なっている。
とはいえ、この場所で彼らが出会って結婚し、デンマーク国王&王妃になったことは間違いない。Slip Innは、『世紀の大ロマンス』が知られるようになって以降、デンマークやスウェーデンなど北欧からの旅行者が、必ずといっていいほど訪れる名所となっている。
今、店内は、14日の新国王即位に合わせ、祝賀ムードいっぱいだ。
2人の『世紀の大ロマンス』は、日本人にとっては、あまり馴染みのないデンマーク王室の知られざるエピソードかもしれないが、たまたまダーリングハーバーでロケがあり、Slip Innの前を通る際にこの話をすると、「へぇ!知らなかった~」と驚きと感嘆の声をあげる人が多い。一般女性が王室入りしたということで、近年の日本の皇室と重ね合わせて考える人が多いからなのかもしれない。
オープンな王室の若いカップルによる新たな時代へ
デンマーク王室は、ヨーロッパの王室の中でも比較的オープンなことで知られ、マルグレーテ元女王も気さくな人柄と聞く。そんな国民に愛されるマルグレーテ元女王が暮らしたコペンハーゲンのアマリエンボー宮殿で、これから2人は王と王妃として暮らしていくこととなる。
デンマーク版皇居ともいえるアマリエンボー宮殿へは、私も2度ほど訪れたことがあるが、誰でも敷地内を行き来できるオープンな造りで、衛兵交代式も間近で見られることから、大勢の観光客が訪れる人気の観光スポットのひとつだ。まさに、オープンな王室を象徴しているような場所でもある。
国民に近い王室の若い国王による新たな時代の治世。その成功の鍵は、英BBCのレポートが伝えるように、民間出身のオーストラリア人妻であるメアリー王妃が握っているのかもしれない。
ともあれ、メアリー王妃、フレデリック王といつまでもお幸せに!〈了〉
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
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