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平野美紀|オーストラリア

大地のパワーを感じるスピリチュアルな絶景スポット、Tjoritja / マクドネル山脈

スピリチュアルなパワースポットとして人気が高まっている「Tjoritja/ ウェスト・マクドネル国立公園」。写真は「シンプソンズ・ギャップ」(Credit:Tourism NT/Sean Scott)

オーストラリア中央部、アリス・スプリングの近郊に東西約644 kmに渡って連なる壮大な山脈「マクドネル山脈」。地球上で最も古い山脈のひとつとして知られるこの山脈は、約3億~3億5千万年前の地殻変動(造山運動)によってできたとされ、かつてオーストラリア中央部を覆っていた内海の痕跡がみられる貴重な場所でもある。山脈の一部は、約10億年前に形成され始めたとする研究もあるそうだ。

素晴らしいのは、太古の地球が造り上げた壮大な景観だけではない。遥か昔からこの山脈と共に暮らしてきた先住民の人々にとっては、重要な創造神話の中心でもあるため、そこかしこに先住民文化が色濃く残り、聖地とされる場所がいくつも点在している。

欧米人観光客の間では、この山脈を縦走する「ララピンタ・トレイル」が「世界トップクラスのトレッキングコース」として人気が高まっていることもあり、この地域に点在する先住民の聖地がスピリチュアルなパワースポットとして注目されているのだ。

newsweekjp_20241105040351.jpg5日間かけてマクドネル山脈を縦走する欧米人観光客に人気の「ララピンタ・トレイル」。「World Expeditions」などが催行するこの地を熟知したトレッキングツアーに参加するのがおすすめ。(Credit:Tourism NT/Tourism Australia

Tjoritja/ウェスト・マクドネル国立公園

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赤い岩肌と太古の時代を生き抜いた貴重な固有植物がみられるTjoritja/ ウェスト・マクドネル国立公園。写真は「スタンドリー・カズム」のウォーキングトレイル。(筆者撮影)

アリス・スプリングスの町の西側に広がる山脈部分は、アクセスが容易で見どころも多く、アリス・スプリングスから日帰りでも十分楽しめる。

今回、数年ぶりに訪れて気になったのは、国立公園の名称だ。これまでは「ウェスト・マクドネル国立公園」として知られていたが、「Tjoritja(ジョリットジャ/ トジョリットジャ ※実際の発音はチョーイッジャに近い)」と記載されるようになっていた。これは、太古の時代からこの地で暮らしてきた先住民の人々が呼んできた名称なのだそうだ。

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完全に「Tjoritja National Park」と書かれている案内ボードもあった。(筆者撮影)

今のところ、併記されていることのほうが多い段階ではあるが、今後は完全に、もともと呼ばれていた地名「Tjoritja」になっていくのだろう。

太古の山脈に残る数々の神話/伝説

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アウトバックらしい風景が広がる「マクドネル山脈」。傾き始めた太陽に照らされる赤い岩肌の山なみと赤土の大地が美しい。(筆者撮影)

この山脈には、先住民の人々が伝えてきた「ドリームタイム」と呼ばれる神話/伝説がいくつも残っている。この地の先住民「アレンテ」の人々によると、この山脈は「イエペレニエ」と呼ばれる巨大な芋虫(毛虫)が這ってできたのだという。そして、地域内には特に重要な7つの聖地と文化的に重要な古代の樹木が登録されているのだそうだ。

絶景&癒しのおすすめパワースポット3選

先住民の人々が聖地として大切にしてきた場所は、大地のエネルギーに溢れ、癒やしや活力をもらえる場所ばかり。とりわけ、赤い岩肌と大地が夕焼けに紅く染まっていく様は、本当に美しく、眺めているだけで心が洗われていくようだ。

そこで、アリス・スプリングスから日帰りで行けるおすすめの「絶景パワースポット」ベスト3をご紹介!

1.スタンドリー・カズム Standley Chasm

山を貫く巨大な亀裂を引き起こした地殻変動によって形成されたという、息をのむような高さ80 メートルの岩の裂け目と青空のコントラストが美しい渓谷。岩の裂け目に立つと、人間の小ささを再認識させられ、岩肌から発せられるエネルギーに包み込まれていくような、不思議な感覚になる場所だ。

newsweekjp_20241104090857.jpg赤い岩の裂け目に立つと、岩肌を通り抜ける風と共に大地の鼓動や息遣いを感じる「スタンドリー・カズム」。先住民の人たちが出産に関わる聖地として大切にしてきたのがよくわかる。(筆者撮影)

先住民アレンテの人々にとって、精神的信仰の基盤となっている重要な聖地のひとつ。彼らはこの峡谷を「水の裂け目」を意味する「アンケル アトワティエ」と呼び、女性の出産に関する重要な場所として位置づけられている。

スタンドリー・カズムは、地元の先住民によって運営されており、入口のカフェで入場料を支払って往復2.4km(約30分)を歩いて岩の裂け目まで行くトレイル(散策コース)になっている。さまざまな固有種の植物や野鳥を見ることができ、キャンプサイトが併設されているので、野趣あふれるキャンプもおすすめだ。

2.シンプソンズ・ギャップ Simpsons Gap

ゆるやかに流れる小川「ロー クリーク」によって長い年月をかけて削られた渓谷で、赤い岩肌と澄んだ小川が創り出す絵画のような風景が見事な場所。

newsweekjp_20240820030604.jpg数多くの神話・伝説が残る「シンプソンズ・ギャップ」。そっと包み込んでくれるような赤い岩山と緩やかな水の流れが造り上げる景観が美しい。(筆者撮影)

先住民アレンテの人々が「ルングットジルパ」と呼ぶ、重要な聖地のひとつ。彼らが祖先として崇める巨大なオオトカゲの住処であった物語をはじめ、数々のドリームタイム(神話)が伝わる神秘的な場所でもある。

40 種を超える希少植物など、この山脈特有の植生が手軽に見られるほか、朝夕には、岩場に生息する有袋類「クロアシイワワラビー」の姿が見られることも。アリス・スプリングの中心地から約20分と近いことから、地元の人たちのピクニックランチのスポットとしても人気の場所だ。

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ボーっと岩山を見ていたらひょっこり現れて、目の前を飛び跳ねながら岩場の巣へと戻っていった「クロアシイワワラビー」。(筆者撮影)

3.オーミストン・ゴージ Ormiston Gorge

赤い岩肌がむき出しになった山脈と豊かな水の流れ、涼やかな木陰を作り出す緑など、大自然が織り成す美しい風景が広がっている壮大な渓谷。地質学的にも非常に興味深い場所なのだそうだ。

渓谷沿いに歩くウォーキングコースからの眺めと美しい景観を創り出すクリーク。(筆者撮影:Instagram/Xより)

この峡谷もまた、先住民アレンテの人々が「クワルタトゥマ」と呼ぶ、重要な聖地のひとつ。ここに身を置くと、人生や価値観、内なる感情についてじっくりと考えることができ、本当の意味でのマインドフルネスを体験できる場所だと言う人もいるそうだ。

太古の時代には熱帯雨林が広がっていた痕跡でもある数々の古代植物のほか、有袋類「ロングテールダナート」などの小さな動物も生息している。聖なる泉や滝をめぐるコース、尾根に沿って歩くコースなど、いくつものウォーキングコースがあるので、お弁当(ランチ)を持参して、山脈の赤い岩肌が夕日に照らされて美しく染まるまで、丸一日楽しむのもいい。キャンプサイトも併設されているので、泊りがけで行くのもおすすめだ。

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Tjoritja/ ウェスト マクドネル国立公園では、ノーザンテリトリー準州の州花である「デザートローズ」(右上)や野生の「セキセイインコ」(左下)など、貴重な固有植物や生き物がみられる。(筆者撮影)

アリス・スプリングス近郊は、これ以外にも100以上の聖地が点在する、まさにパワースポットの宝庫。上記以外にも見どころが盛り沢山だ。

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乾燥したオーストラリア中央部でありながら、ほぼ永久に水を湛えるエラリークリーク・ビッグホール。(筆者撮影)

日本では観光地としての知名度はまだ低く、日本人観光客に出会うことはほとんどない。有名になって団体客が大挙して押し寄せる前に、ぜひ一度、訪れてみてほしい。〈了〉

Tjoritja/ウェスト・マクドネル国立公園 Tjoritja / West MacDonnell National Park
※国立公園の入場には、パークパス(入場券)が必要です。詳細はこちら

Special thanks to:Tourism Northern Territory, Wild Honey Travel

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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