Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
感動のオーストラリア即席応援団、公式SNSの日本語発信で日本人野球ファンの心をわしづかみ
11月16日~19日まで東京ドームで行われた「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」。アジア圏のプロ野球リーグから、24歳以下または入団3年目以内の選手(オーバーエイジ枠は29歳以下で3名まで)で構成された各国代表チームが、アジアのプロ野球の頂点を目指す大会だ。
アジア圏でプロ・リーグがあるのは、日本、韓国、台湾、オーストラリアの4ヶ国。この参加4ヶ国の代表チーム・メンバーのうち、日本はもちろん、韓国と台湾も、プロとして野球だけで生活が成り立つ選手がほとんどではないかと思うが、オーストラリアはそうではない。
豪国内リーグ所属選手は、安定した収入を得るために、基本的に仕事をしながら野球を続ける『二足の草鞋』の選手が多い。公式戦の日も仕事があって、試合前練習に遅れてくる選手やコーチもいるくらいだ。プロ・リーグとはいえ、他の3ヶ国と比べたら、待遇の差は歴然。普段、バニングス(ホームセンターのようなところ)で働きながら野球を続けているような選手が、年棒数千万または億単位を稼ぐ選手と肩を並べて戦っているということだけでも、感慨深いものがある。
オーストラリアのプロ野球リーグ「ABL」は、運営側もほとんどボランティア的な感じで、野球好きな学生が休みの日に手伝っていたりする姿も珍しくない。ここにも書いたけれど、みんな本職の仕事していることもあって、シーズンが始まる直前まで、ABL本部も各球団も誰も関知しておらず、寂しいくらい静か...(涙)
そんな、野球では食っていけない国、オーストラリア。以前、このコラムでも書いたように、野球というスポーツの人気がないことが一番のネックになっている。それでも、「野球」が好き!という人たちが集まって、なんとか盛り上げようと頑張っているのが、オーストラリアのプロ野球なのだ。
今年2度目の代表チーム訪日で、公式SNSが日本語で情報発信を開始!
今大会参加のために、WBCに続いて今年2度目の訪日となったオーストラリア代表チーム。今回は、これまでとは違う意気込みにあふれていた。
なんと、公式SNSが突然、日本語で情報を発信。今回、来日するメンバーの紹介を日本語で作って公開したのを皮切りに、X(Twitter)やインスタグラムなどのSNSへ、日本語を交えて投稿し始めたのだ。
「私たちは日本食が大好きです!」と、選手の好きな日本の食べ物を紹介したり、オーストラリア代表チームをサポートしている国民食ミートパイのFour'N TwentyのPRも兼ねて、「東京ドームにFour'N Twentyを食べに来ませんか?」、「ありがとう日本」などなど、次々と日本語で投稿。
さらには、「今日私たちを応援してくれるなら、これをリツイートしてください!私たちは日本が大好きです!!!」と日本語で熱烈なラブコールを送って、じわじわと日本人フォロワーを増やし、あれよあれよという間に X では数千人の日本人フォロワーを獲得した。
今日私たちを応援してくれるなら、これをリツイートしてください!私たちは日本が大好きです!!!
-- Team Australia (@TeamAusBaseball) November 17, 2023
そして、3位決定戦前日の18日には、「私達は皆さんの応援歌と手拍子が必要です。」「日本人は私たちのために歌ってくれますか?」「中日のチャンステーマ『狙い撃ち』を歌ってもらいたいです」などと、日本の人たちへの『お願い』を投稿。19日の当日には、「私たちのために拍手とチャントをしてくれませんか?」と呼びかけた。
1: "AUSSIE AUSSIE AUSSIE" - OI OI OI
-- Team Australia (@TeamAusBaseball) November 18, 2023
2つ目は いつもプロ野球の応援でやっている レッツゴー!レッツゴー!オージー!
3つ目は特にスペシャルです! 私達は中日のチャンステーマ「狙い撃ち」を歌ってもらいたいです。
オーストラリアを応援している方はリツイートしてください | RT if you are supporting Australia!
-- Team Australia (@TeamAusBaseball) November 18, 2023
私たちのために拍手とチャントをしてくれませんか?
日本の友達の前でもう1試合! Let's win bronze!
Watch on Baseball+ in Australia. pic.twitter.com/1Rj7a9f7zk
この呼びかけに、日本の野球ファンが反応。東京ドームに集まった有志達によって、即席オージー応援団...人呼んで「カンガルー・クラブ」が結成されたのだ。オーストラリア代表チームの日本語での呼びかけと日本大好きラブコールが、日本の人たちのハートをグッと掴んだ結果に違いない。(ときに機械翻訳っぽくなっているところはご愛敬(笑))
私も中継を見ていたが、試合が始まったばかりの頃は、オーストラリアを応援している人はポツポツいる程度(全体で数十人くらい?)だったのが、時間が経つにつれて人数が増え、大きな輪ができ、数百人規模の一大応援団へと発展。台湾の応援をもかき消す、オーストラリアの選手たちへの大声援と応援歌が東京ドームに響き渡った。
初めて、あんなにスゴイ大声援を送られたオーストラリアの選手たちは、本当に驚いたことだろう。広報担当のSNS投稿に、その驚きと感動が表れている。
オーストラリア代表チームは、日本に行くたびに野球の応援のすごさに圧倒され、あんな風に応援してもらえたら・・・と、ずっと思っていたのだろう。それもそのはず、普段のABLの公式試合では、スタジアムの一角を占める大勢の観客が声を揃えて応援歌を歌い、掛け声を合わせ、大声援を送る姿なんて見たことないのだから。
昨年、野球関連番組のロケをセッティングした時、日本の甲子園(高校野球)についてどう思うかという問いに対し、ニルソン監督が「jealous(嫉妬)」という言葉を用いて、日本の野球の人気ぶりを羨ましがっていたのを思い出す。
オーストラリアで野球をやる人たちにとって、日本における野球に対する人気の高さは「嫉妬」するほどなのだ。
意外と強いオーストラリア野球、ABLの今シーズンは15名の日本人選手がプレー
今回の「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」では、残念ながら4敗し、最下位となったが、オーストラリアのプロ・リーグ「ABL」は、二足の草鞋選手主体でありながら、意外と強い。
初戦の韓国戦は、延長の末、2-3で惜敗。第2戦の台湾戦は、9回まで0-0といい勝負をしながら再び延長戦のタイブレークとなり、0-6で残念ながら敗戦となった。銅メダルをかけた台湾との3位決定戦では、3点を先制されながらも7回に追いついて勝負強さを発揮。ここまで互角の戦いをしながら、最後の9回裏でサヨナラ負けを喫したとはいえ、底力はある。技術面などで、ちょっとしたコツのようなものを伝授してくれる指導者が現れれば、もっともっと強くなるはずだ。
ABLのシーズンは、先日11月17日に開幕したばかり。日本とはシーズンが逆となるため、毎年、日本のプロ野球チームからも数名の選手が派遣されている。今シーズンは、横浜ベイスターズ2名、オリックスバッファローズ4名、千葉ロッテマリーンズ3名に加え、元プロ野球選手や社会人野球で活躍した選手を含む15名の日本人選手が参加。過去には、西武の高橋光成投手、今年MLBに挑戦する横浜の今永昇太投手など、若い時に1シーズンABLでプレーし、帰国後、メキメキと頭角を現した選手も少なくない。
今のところ、豪国内における野球の人気はまだまだ低いが、今大会のように野球好きな日本人や日本のプロ野球を知る日本人選手たちが、オーストラリアの野球を盛り上げる起爆剤になりそうだ。〈了〉
▼Team Australia 公式SNS :X(Twitter)、Instagram
▼ABL (Australian Baseball League)公式サイト
▼ABL 公認日本語サイト
▼ABL 2023-24シーズンに加入する日本人選手(豪多言語放送SBS日本語ニュース)
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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