Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
マイケルが愛した飛行機と70年代ファーストクラスに溜息... ~カンタス創立博物館
オーストラリアのナショナル・キャリア(フラッグ・キャリア)といえば、赤地の尾翼に描かれた白いカンガルーでお馴染み、「フライング・カンガルー」の愛称で親しまれているカンタス航空だ。
1920年、クイーンズランド州の内陸部「ウィントン」で誕生し、現在も創立当時の名称のまま、継続運航している航空会社としては、世界で2番目に古く、現在でも国際及び国内便の就航都市数において豪国内最大の航空会社でもある。
『QANTAS(カンタス)』の名称は、もともとクイーンズランド州とノーザンテリトリーを結ぶ航空会社として発足したことから、当時の社名「Queensland And Northern Territory Aerial Services Ltd」の頭文字を組み合わせたものだ。
カンタス創立博物館の入口。(筆者撮影)
ウィントンで設立された翌年の1921年には、ウィントンの南約179kmの「ロングリーチ」に拠点を移し、そこで本格的な運航を開始したため、ロングリーチは「The home of QANTAS(カンタスの本拠地)」と呼ばれる。そのため、ロングリーチ空港の敷地内に「カンタス創立博物館」があるのだ。
実際にカンタス創立博物館を訪れるまでは、「航空マニアじゃない限り、わざわざ見にいく価値があるのだろうか?」などと、(不謹慎にも)ちょっと思ったりしていたのだが、行ってみたらこれが想像以上に面白かった!
圧巻の実物航空機コレクション
カンタス創立博物館の最大の見どころは、なんといっても実物の航空機コレクションだろう。館内に足を一歩踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、1913年に英国で製造が開始され、カンタスが運航を始めた最初の航空機「アブロ 504(レプリカ)」だ。
カンタス航空と航空機の歴史を間近で見られる「カンタス創立博物館」の館内。(筆者撮影)
機内安全ビデオにも登場するカンタス創業を偲ぶ倉庫。中には貴重な航空機が展示されている。(筆者撮影)
航空機整備用として建てられた倉庫及び屋外には、オーストラリアの航空史を物語る貴重な航空機が展示されている。カンタスが1924年に導入した「デ・ハビランド DH50(レプリカ)」や「デ・ハビランド DH61 ジャイアント・モス(レプリカ)」をはじめ、1950年代に海外路線としても活躍した「PBY-6A カタリナ」や「ロッキード L1049」、「DC3 VH-EAP」、2000年代に入るまで活躍した「ボーイング 707-138 VH-XBA」など、歴代の実物機がずらり!これは、マニアなら垂涎ものではないだろうか。
マイケル・ジャクソンが愛した飛行機
なかでも目を見張るのが、故マイケル・ジャクソン氏とジャクソンズ(ブラザー)が、1984年に行った『ビクトリーツアー』の移動に使用したというVH-EBAと呼ばれたボーイング707型機だ。
当時、この機体は、カンタス社から米国のチャーター会社へ登録が移され、裕福層向けのチャーター機としてリストアされたばかりで、『ビクトリーツアー』用チャーターのオファーが入ったという。
機内は、まるで一流ホテルのような造りだ。大型のベッドが入ったベッドルーム、ゆったりと座れるソファやテレビが置かれたラウンジ、収納やトイレに至るまで木目が美しいオーク調の木材が使われ、そこかしこにゴージャス感があふれている。
(下)左上から時計周りに:ベッドルーム、ラウンジ、ラウンジのソファ、トイレ。トイレは蓋を閉めると1人掛けソファになる仕様。(筆者撮影)
ファンの間では伝説として語られるこのツアーの最中、マイケルはこの航空機を大層気に入り、購入したいと申し出たというが、諸事情で叶わなかったのだそうだ。
溜息が漏れる豪華な70年代ファーストクラスと歴史を刻んだバービー人形
個人的に刺さったのが、70年代のファーストクラスだ。カラフルなテキスタイルを使ったソファが中心になったラウンジ・スタイルで、乗客は飛行中にお酒を飲みながら、まるで一流ホテルのクラブ・ラウンジで寛ぐように過ごすことができたらしい。あまりの美しさに思わず溜息が漏れるほどだ。(この記事のトップ画像)
カンタスの機内で流される「機内安全ビデオ」には、このファーストクラスをはじめ、貴重な機体が収められている倉庫など、カンタス創立博物館内各所や所蔵航空機が登場しているのも興味深い。
最後に・・・個人的に最もウケたのが、カンタス航空客室乗務員の歴代ユニフォームを着たバービー人形。このなかに、新型コロナウイルスのパンデミック中に飛行した客室乗務員が着用していたコスチュームがあるのだ。
カンタス歴代ユニフォームを着たバービーの中には、コロナ禍で防護具(PPE)に身を包んだスタイルも...(筆者撮影)
何年後かには、「そういえば、こんなこともあったなぁ...」と、懐かしく思い出す日が来るのだろう。もちろん、本物の歴代ユニフォームも展示されているが、これら歴史を語るバービーは必見だ。
カンタス創立博物館では、コックピットに座ることができたり、翼の上を歩くことができたりと、普通ではなかなかできない体験もできる。飛行機好きの子供はもちろん、航空ファンなら大満足に違いない。日没後には、航空機の機体をスクリーンに見立てたサウンド&ライト・ショーも行われており、そちらも思いがけずよかったので、夜の部もぜひお見逃しなく!〈了〉
▼ Qantas Founders Museum カンタス創立博物館
住所:1 Hudson Fysh Drive, Longreach Airport, Longreach QLD 4730
Special thanks to:Tourism Australia, Tourism and Event Queensland, Qantas Founders Museum
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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