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ひきりん|ベルギー

「ポスト・メルケル」ドイツの次期リーダー候補者たち

左からマルクス・ゼーダー(バイエルン州首相、CSU党首)、アルミン・ラシェット(ノルトライン=ヴェストファーレン州首相、CDU党首)、イェンス・シュパーン(保健相、CDU副党首)

アメリカ大統領就任式のあった4日前の1月16日、ヨーロッパではドイツでアンゲラ・メルケル首相の所属する与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首選がオンラインで実施された。アメリカ情勢によって掻き消された感もあって、日本でこのニュースに触れた人々がどれだけ居たか疑問であるが、世界第4位、欧州で最大の経済大国にしてフランスと並んで欧州政治の中心国ドイツの首相候補が選ばれる争いだけに、ドイツのみならずヨーロッパでは関心が集まった。3候補が出馬した党首選はバーチャル投票形式で行われ、ドイツ経済の牽引役ルール工業地帯を抱える西部ノルトライン=ヴェストファーレン州首相のアルミン・ラシェット(59)が新党首に選出された。連立を組む第2党の社会民主党(SPD)に勢いがなく、今年9月に行われる予定の連邦議会(日本の衆議院に相当)選挙で政権交代が起こる見通しは低い為、最大与党CDUのラシェット新党首が自動的にドイツ新首相に決まったようなものとも考えられるが、実は話はそう単純ではない。

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就任当初は圧倒的な高い支持を誇った菅内閣の支持率が急落し、10月に任期を迎える衆院選を前に、自民党総裁の座も危ぶまれる声も出てきた中、安倍長期政権後に訪れたこの不安定さと少し似たような状況がドイツでも起きている。こうした状況を読み解くには、前回4年前の総選挙の結果を受けて、メルケルの影響力に翳りが見え始めた頃まで遡って話をする必要があろう。

前回2017年総選挙の混乱

CDUでは2年前の2018年12月にも「ポスト・メルケル」を選ぶ党首選をしており、メルケルの側近で、同じく女性の「ミニ・メルケル」とも称されるアンネグレート・クランプ=カレンバウアー(頭文字をとってAKKとの愛称で呼ばれる)を新党首に選出していた(現国防相)。ところが、就任後の各種選挙での度重なる敗北や失言が祟って求心力が低下。昨年20年2月の州議会選での方針の失敗が決定的な仇となり、次期首相候補になることを断念し、党首からも退くことを表明。新たな党首選はコロナ禍で2度延期される羽目になり、退陣表明からようやく一年近く経って実現に至った。

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日本と同じく議会制民主主義のドイツでは、国政の総選挙である連邦議会選挙で全議席を争い、その結果により単独与党、もしくは連立与党の中から首相を選出する仕組みで、アメリカやフランスの大統領のように直接選挙で国のリーダーを決める仕組みではない。2005年の総選挙で、当時メルケル党首の下で野党だったCDUは、南部バイエルン州の地域姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)と共に、ドイツ社会民主党(SPD)と同盟90/緑の党連合の与党に僅差で勝利し政権に復帰。CDU/CSUとSPDの大連立の中で第1次メルケル内閣が発足。現在まで4期16年に渡る長期政権を樹立するに至った。

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ただ、前回の2017年の総選挙では、シリアを中心とした大量の難民を受け入れたメルケル政権への批判票が、反移民・難民、反イスラム、治安重視を主張する右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)や、2013年には議席0から(ドイツでは少数政党乱立を防ぐため、5%未満の得票率の政党は議席が与えられない)倍以上の得票率を得て、80議席と大幅増で返り咲いた新自由主義的な自由民主党(FDP)に流れ、戦後のドイツ政治を担ってきた左右の二大政党が揃って歴史的な議席大幅減となった。この結果を受け、メルケルは首相を続投しながらも、CDU党首退任する意向を固めた。現在4期目のメルケル政権では第2次政権を除く11年間、この二大政党がメインで共存する大連立政権となっている。

Profile

著者プロフィール
ひきりん

ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。

ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記 

Twitter:@hiquirin

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