World Voice

NYで生きる!ワーキングマザーの視点

ベイリー弘恵|アメリカ

世界的なプロスピーカーとして栄誉あるCSP®を獲得した初の日本人~信元夏代

©Natsuyo N. Lipschutz (掲載の写真すべて ©Natsuyo N. Lipschutz)

日本企業が抱えるグローバリズムの課題解決に取り組む


──まず、これまでのご経歴を教えていただけますか?

アメリカに留学していたため1995年9月に早稲田大学を卒業し、その後、ニューヨークに来ました。伊藤忠インターナショナルで鉄鋼や紙パルプを扱っていましたが、さらにMBAを取得するためにニューヨーク大学に進学しました。サマーインターンではマッキンゼーで戦略コンサルタントとしての経験を積みましたが、2001年の911の影響で就職市場が冷え込み、100社以上に応募しましたが職が見つからず、卒業後は無職のままでした。

──100社以上の応募ですか。大変な時期でしたね。

そうなんです。応募するたびにレターを書いているうち、何をしているのか分からなくなったほどです。最終的には日本企業が海外へ出ていくための戦略コンサルティングができるよう、マッキンゼーと同じようなクオリティの高いサービスを提供しつつ、よりアクセスしやすい形で企業を支援するコンサルティング会社を2004年に立ち上げました。

──どういった戦略コンサルティングを重視しているのですか?

日本企業の課題として、素晴らしい戦略があっても、現地スタッフとのコミュニケーションがうまくいかず、戦略が実行されずに終わることが多いことに気付きました。また多くの日本企業が海外進出を試みる中、コミュニケーションの壁が原因で撤退するケースを多く見てきました。そこで、異文化コミュニケーションの研修やワークショップを通じて、こうした課題を解決する支援を始めました。

──具体的にはどのような取り組みをされていますか?

現地スタッフとの異文化間コミュニケーション力や多様性の高いチームのマネジメント能力を高めるためのトレーニングを提供しています。また、個人のスピーチ力や発信力も重視していて、それがチーム全体のマネジメント力につながると考えています。こうした取り組みを通じて、グローバルビジネスで通用するスキルを培っています。自分のことをスピーチ、プレゼンの総合コンシェルジュと称しています。

──では異文化コミュニケーションのスキルは、どのように身に付けるべきですか?

まずは、自分の文化と他者の文化の違いを理解することから始まります。そして、それを尊重し、相手の立場に立ったコミュニケーションを心がけることが重要です。私自身も、スピーチやプレゼンを通じて、このスキルを磨き続けています。

プロフェッショナルスピーカーになるまでの道のり

──現在、プロフェッショナルスピーカーとしても活躍されていますが、どのような経緯でこの道に進まれたのですか?

実は、私は元々スピーチやプレゼンが得意ではありませんでした。2000年にNY大学のMBAに通い始めた初日、クラスで自己紹介をする必要がありました。頭の中ではこのように話そうと決めていたことが、いざ自分の番になったときには頭が真っ白になり、考えたこととは違う言葉がでてしまって、そこで固まってしまいました。

MBAではチームプレゼンが多く、毎回、一番短いセクションを率先して担当しました。質問がくると上手に、他のメンバーに振っていました。それくらいスピーチが苦手だったんです。このままではいけないと感じ、スピーチクラブに無理やり入ることにしました。

当時、参加者は5人ほどで、いきなり「このテーマで2分間話してください」とお題を与えられ、何を話したのか、ほとんど覚えていないほど緊張していて、1分弱くらいで話が終わってしまいました。それ以来、そのクラブには行かず、そのまま卒業しました。

──スピーチを行うためのハードルをどう乗り越えたのですか?

ある日系企業のクライアントとミーティングをしていた時、日本人のバイスプレジデントのプレゼンやコミュニケーションの英語が明瞭で素晴らしかったので、「どうやって学ばれたのですか?」と伺ったところ、「スピーチクラブに入って学んだ。」と仰ったのです。

そこで私も国際的にネットワークのある※1トーストマスターズというスピーチクラブへ見学に行くことにしました。TOASTMASTERS日本のサイト

トーストマスターズでは、クラブ内のスピーチコンテストから始まり、エリア、ディビジョン、ディストリクト、そして世界大会と、いくつもの段階を経て進んでいきます。

私はその挑戦を続け、準決勝まで勝ち進むことができました。決勝に進んだとき、ジャマイカ出身の50歳くらいの女性、ジャニスが私に近づいてきて、「あなたのスピーチは素晴らしかった。コーチングしてあげるわ。」と声をかけてくれたのです。しかも、無料でコーチングしてくれるとのことで、援助を受けさせていただきました。

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──ジャニスのコーチングはどのようなものでしたか?そこからプロスピーカーになるまで、どのようなプロセスがあったのでしょうか?

ジャニスから「あなたのスピーチには、言いたいことが多すぎるから、何を一番伝えたいのか、一つに絞りなさい。」と指摘され、私のスピーチに対する考えは大きく変わりました。これまで、たくさんの情報を詰め込んで聞き手に多くのことを持ち帰ってもらおうと考えていたのです。

彼女は「スピーチは一方的に話すのではなく、まるで喫茶店でお茶を飲みながら一人一人と対話するように話しなさい。」と教えてくれました。そのアドバイスを半信半疑で実行してみたところ、スピーチの質が大きく向上しました。

感覚としては、私の心臓から赤い糸がたくさんでていて、聞いている人たちそれぞれにその赤い糸とつながっていて、観客がうなずいたり、'Right'って言ってくれてたり、同時多発的に双方向でのやり取りが生まれている。スピーチが一方向ではなくなったのです。

結果、決勝後も準優勝したことで、英語がノンネイティブでも、スピーチやプレゼンに戦略があれば、世界で通用することがわかりました。私はこの経験を、日本人はもちろん、世界中の人たちに伝えたいと思っています。プレゼンの伝道師として広めていくことが私の目標です。そこから、自分自身でもスピーチを行いながら、人に教える道へと進むようになりました。

同時に、スピーチをすることで自分が癒されていることに気付きました。特に、2017年に乳がんを経験した際、スピーチが私にとってヒーリングの一環となり、それがきっかけでプロフェッショナルスピーカーとして活動を本格化させました。

Profile

著者プロフィール
ベイリー弘恵

NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。

NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com

ブログ:NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

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