千葉出身のローカルダンサーから故・志村けんさんも認めるアーティスト、そしてHIP HOPの女王リル・キムのバックダンサーへと転身をとげているSatokoに取材。

リル・キムは、HIP HOP全盛期にHIP HOPの女王として君臨していたアーティストだ。Satokoは、そのアーティストのバックダンサーとしてツアーを回り、すでに15年近くがたつのだという。

そもそもクラシックピアノを3歳からやっていた東邦音楽大学出身の女性が、なぜHIP HOPの世界へいったのだろう？

「東京ではSMAP x SMAPやその他音楽番組でのダンサー出演、そして東京オートサロンやダンスイベントなどに出演していましたが、その先が見えなかったというか、ダンサーとしてここから先、ほかに何ができるのか？というときに、周りの友達がNYやLAに行き出したこともあり私は2008年に1年だけという軽い気持ちでNYへきました。そしたらハマってしまったんです。」

日本で充分にダンサーとして活躍していたと思うが、それでも将来が不安だったというのは残念だ。ならば日本のダンス業界では、どのポジションにいれば成功者なのだろうか？なぜNYにハマったのだろう？

「まずNYの雰囲気とかバイブス、ノリっていうのかもしれませんが、自分の肌に合っていました。

ダンスの方面でも、日本では割と華奢で可愛らしい子のほうが使ってもらえることが多いのですが、アメリカはその逆で、個性をしっかり見てくれるというか、ユニークでいることが逆にプラスになるし自分の体型的にもアメリカの方が馴染んだのもあり、ダンサーとして声をかけられることが次第に多くなってきました。

今は、リル・キムのツアーが入ってないときは、大体他のアーティストさんの現場に入ったり、オフシーズンはダンス講師、ピアノ講師などをしています。」

突然NYにやってきてリル・キムのバックダンサーになれたというのは、ラッキーなことだが、どのようにして勝ち取ったのだろうか。

「最初の1年は英語もできなかったのですが、オーディションへ行けば英語の勉強になるし友達もできるだろうからと、とにかくオーディションへいきまくりました。1年後くらいにようやく少し英語がわかるようになってきて、小さいダンスの仕事も入ってくるようになってきたんです。

ある日たまたま友人に教えてもらって行ったオーディションがリル・キムのバックダンサーのオーディションだったんです！そこで目に止めてくださり本格的にプロのダンサーとしての活動が始まりました。

半年後には、アーティスト・ビザもとっていたおかげで、リル・キムのナイジェリアやルワンダといった国のアフリカ・ツアーや Chris Brown, 50centらのゲストと共にオーストラリアツアーについていくことができました。」

それほど長く一緒にツアーを回っていらっしゃると、リル・キムとはマブだちレベルなのではないですか？

「そうですね、私は彼女のことをBIG SISと呼ばせてもらっています。お仕事には必ず呼んでいただけます。

去年はHIP HOPが誕生して50周年の年だったので、リル・キムのライブで沢山の州に行かせてもらいました。NYで、歴史に残るヒップホップ誕生祭が8月にヤンキー・スタジアムで開催されたのですが、スヌープ・ドッグ、アイス・キューブといった大御所に加え、リル・キムも出演したので私もステージに立ちました。

ステージに立ったアジア人は私だけでしたし、日本でもyoutubeを通してストリーミングをしており、沢山の友達から連絡を貰って嬉しかったです。」

まさかクラシック音楽をやっていた日本の女の子がHIP HOPの世界を代表するアーティストと同じステージに立つ日がくるとは？本人も思わなかっただろう。

「日本にいる頃は、HIP HOPミュージックを通してブラックカルチャーには触れていましたが、ブラックの人たちとは住んでる環境も世界もまったく違うし、きっと遠い別の世界なのかなっと思っていました。

高校生や大学生の頃はピアノと並行してクラブでダンスイベントに出たりしていました、親は厳しいところもありますが、やりたいことは何でもやらせてくれました。

エスカレーター式の高校だったので、そのまま進級することもできましたし、音大に特別興味があるという訳ではなかったのですが、高校３年生のときに、たまたまピアノのグレードのお話をヤマハに聞きに行った際に、これまで小中学生時代に、ピアノのコンクールで受賞歴がたくさんあるから、音大を受けたらどうか？と、ヤマハ音楽教室の先生からのアドバイスをいただいたんです。そこから音大を目指して毎日１０時間くらいのレッスンが始まり、音大に受かったんです。

音大を出たことによって、音楽の良さを改めて知りましたし音楽の深さを知ったことで、のちに志村けんさんが三味線を演奏される際のピアノ演奏者として指名してくださりお仕事でつながることができました。そしてここ最近ではミュージカルにも出演させていただく機会が増え、それも音楽をちゃんと勉強していたことからつながっているのだと感じています。」

音楽の世界からダンスへ入っていったのはなぜですか？

「ピアノは３歳からやっていましたが、中学三年生くらいから、自分よりうまい子がでてきて、賞がとれなくなったこともあって、部活にも入ってたのもあり中学３年生でいったんやめていました。ダンスは小学校５年生からやっていたのですが、チュチュやカワイイ衣装を着れることが楽しくて始めましたのですが、センスがないのかなかなか芽が出ませんでした。

でも、ダンスだけが、唯一の自分から始めた習い事なんです。高校に入り安室奈美恵ちゃんやSPEEDが出てストリートダンスに出会い、スニーカーをはいてダンスを踊りたいと思い、HIP HOPに出会いました。

そもそもピアノは孤独との闘いなんです。一人きりで毎日７時間とか８時間くらい練習をします。それに対して、ダンスはカワイイ服を着て、友達と踊れるという楽しい時間でした。そこからは、ダンスとピアノを平行してやることとなり、昼はピアノを学び、夜はダンスのイベントに出ていました。」

大学を出てからは、ピアノの先生、ボイストレーナーと、ダンス講師、３つの仕事を掛け持ちでやっていたという。

「今は誰でもダンスの講師になれますが、当時は、それなりのバックグラウンドがなければ、ダンス講師にはなれない感じでしたので、私もただ一生懸命に講師をさせていただいたりしていました。そんなこともあり今でも一つ一つのレッスン、ショーなど大切に取り組んでいます。　」


Satokoが手かげているダンスは、世界中の人たちが知っている華々しいセレブばかり出てくるので、ここに記しておきます。

マドンナ、マライアキャリー、Sean Paul, Ashanti, Keyshia Coleなど数々のトップアーティストの振り付け、バックダンサーとして活躍。近年ではNFLハーフタイムショーの振り付け、出演でCiara, Bad Bunnyと共演、全米のTV(ESPN)でオンエアーされた。 昨年は、ジャネット・ジャクソンのTOGETHER AGAIN全国ツアーでのLil Kimのゲストライブに出演したという。

2021年にブロードウェイミュージカル・「イン・ザ・ハイツ」の日本公演のキャストとしてミュージカルに出演。安室奈美恵や数々の日本のトップアーティストの演出・振り付けを行うTETSUHARUさんの演出作品で、ミュージカルとの魅力に出会う。

「ミュージカルは、ダンスだけではなく、歌、演技と色々な要素が混ざっており最初は大変でしたが、今まで培ってきたものの全てが凝縮されたような気がして、どんどんはまっていきました。　

実は先月日本から帰ってきたのですが、去年の秋から今年の初めにかけてTETSUHARUさんのオリジナルミュージカル・THE AGENTというダンス・アクションミュージカルに出演させていただいておりました。

今後は今までの活動、HIP HOPをベースとしたCommercial dance の活動をしつつ、ミュージカルの方へも更に挑戦していけたらいいなと思っています。」

さらに昨年は、個性豊かなダンサーを育てるためダンスカンパニーを設立！　後編に続きます。

【関連リンク】
●Satokoオフィシャルサイトhttps://lit.link/en/tokebabe
●Satokoインスタグラム　https://www.instagram.com/tokebabe/
●Choreographer, Erick from StrykeforceENTと WE ALL WE GOT というダンスカンパニー を2023年に立ち上げ、個性豊かなダンサーを育てている。　インスタグラム　@we.all.we.got

【プロフィール】
SATOKO MORI
東邦音楽大学ピアノ科卒業後、ピアノ講師、ダンス講師、ヴォイストレーナーとして活動し、2008年単身渡米。 現在NYを拠点に振付師、ダンサー、キーボード奏者としてWorldwideに活動する。 渡米後約2年でLil Kimのワールドツアーダンサーに決まり、その後マドンナ、マライアキャリー、Sean Paul, Ashanti, Keyshia Coleなど数々のトップアーティストの振り付け、バックダンサーとして活躍。その他NFLハーフタイムショーの振り付け、出演でCiara, Bad Bunnyと共演、全米のTV(ESPN)でオンエアーされた。 近年では、ジャネット・ジャクソンのTOGETHER AGAIN全国ツアーでのLil Kimのゲストライブに出演。 2023年８月にはヤンキースタジアムで行われたHIPHOP誕生祭、HIP HOP 50 LIVEでLIL KIMのバックダンサーとして女性ダンサー2人の中の1人に選ばれ、6万5,000人の観客の中観客を魅了した。

その他、Lil Eddie のMV"GRINGA"出演と振付、カナダのオンタリオプレイスでのA Boogie Wit Da Hoodieのライブ"Rolling Loud"では50,000人の観客の前で圧巻のパフォーマンスを魅せた。 世界中でブレイク中のK-POPアーティスト, BTSのアメリカ・国連本部でのパフォーマンスにバックダンサーとして出演や、アメリカの報道番組グッドモーニングアメリカのソウルトレインのコマーシャルにアシャンティと共に生出演、Queen of R&BのKeyshia Coleのアシスタントコレオグラファー、ダンサーとしてニューヨーク・バークレーセンターでのコンサートに出演等。 日本での活動にも力を入れており、故・志村けん主演の舞台【志村魂】【志村笑】に振付師として参加。演者としてはダンサー(バカ殿様 腰元役), 志村けん三味線独奏の際のキーボード奏者として出演。 2021年春、ブロードウェイミュージカル・インザハイツに出演。 2022年、ブロードウェイミュージカル"DREAM GIRLS"の日本版初演の振付助手として参加。 現在はLil Kimの専属ダンサーとして全米各地の彼女のライブに出演、そして 2024年秋に日本でミュージカルが出演決定している。