NYで生きる!ワーキングマザーの視点
NYのRIDEツアーでストリートパフォーマーとして活躍中の中澤利彦
RIDEはニューヨークの歩道に向かって座席が配置されたバスで、マンハッタンの摩天楼をくぐりぬけるツアー。ストリートにはエンターテイナーがダンスのパフォーマンスをしたり、直接ガイドとストリートにいるコメディアンのような人が会話したりもする。
ツアーの最後には、フランクシナトラが歌って大ヒットした曲♪ニューヨークニューヨーク♪を観光客も大合唱して、めっちゃ盛りあがるのだ。
ストリートでUPS(アメリカの宅配便)のワーカーの服を着て歩いてるから配達人かと思いきや、ブレイクダンスを始めたりするのだけど、そのパフォーマーの一人に日本人男性がいる。それが中澤利彦だ。
©Shintaro Ueyama
パフォーマーとしてだけでなく、中澤は日本にいる若い学生やアーティストが世界で活躍できるチャンスを与えるため自らが講演をし、人と人とをつなぐことが好きなのでゲストを招いて講演会を開催している。
「今のところRIDEが主なパフォーマンスの場です。RIDEは時間的にフレキシブルにできるので、やりたいことを優先できます。そのほかはダンスのインストラクターをやっています。とはいえ、頼まれたらやるくらいでレギュラーでは入っていません。
学生時代から、教員になることは希望でしたが、今の目標は、講師として活躍の場を広げることです。」
グリーンカードを取得できるほどの卓越能力者なので、ダンスをいつから始め、どのように練習していたのかとても気になる。
「大学でダンス部に入っていまして、2010年に渡米しました。それまで海外も、飛行機すら乗った事は無かったのですが、ニューヨークという響きがかっこいい!と思い、渡米しました。
3年間うどん屋さんの店長として3年間働いて、お金を貯めました。EB-1※1カテゴリーのグリーンカード(永住権)がとれたことで、アーティストとしての活動だけでなく、ほかの視野や活動も広がりました。
アーティストのビザとは違って、心の余裕は変わりましたね。それまではクレジットを確保するため、メディアから依頼がきたら、ダンスのイベントに出続けないとならないし。アーティストとしてクレジットのためショーにでることもありました。今は自分がやりたいイベントだけに力を注げるようになりました。」
ダンス以外の活動がアメリカでもできるようになってからは、日本やニューヨーク以外にも活動の場を広げたいのだという。
「日本では、たとえば小中学生のサマースクールや大学の講師の誘いがきたら受けています。体育とかで、子供たちの教育にかかわれれば、ニューヨークで学んできた経験を生かして伝えられることがあると思っています。
アメリカでアーティストビザが切れて日本へ帰るアーティストは多いので、彼らが日本でアーティストとして活動できるチャンスを与えることで、国際交流になりますし、アーティストの方には仕事のできる場をつくれます。
逆輸入みたいに、アメリカでアーティストとして活動したことで得られた話をしたり、実際にパフォーマンスしてもらったり、それ以上にその人のことを知ってもらっています。ニューヨークへ来てみたいという若い世代の機会を創出していきたいですね。
これまでも 静岡や東京でやってきたのですが、日本全国でやっていきたいです。」
ご自身はパフォーマンスを続けないのですか?
「アーティストとしての活動にこだわりはなくて、楽しいことがあれば、そっちへいきたいです。人とのつながりをつくることが好きなので、イベントプロデュースなどを今は楽しんでやっています。たとえばパフォーマーを500人集めて、助成金を集め、自分も出演して、できるうちは舞台に立ち続けながらという感じです。」
©Toshihiko Nakazawa
いつもニューヨークでの交流会イベント開催のときには、キラキラの衣装で登場している上、ストリートパフォーマーという職業柄、目立ちたがりなのか?って勝手に思っていたら、お酒も飲まないし、パーティーにもいかない、本人はまったくの引っ込みじあんなのだとか。
「ニューヨークで活躍したという人ばかりじゃなくて、学生さんだったという人でも、その人の姿を目指すためのパッションを伝えられる人であれば講演者になれるって思っていて。
私の場合は1年ちょっとでビザがとれて、アポロシアターのアマチュアナイトでチャンピオンになったけど、その背後でどういうことをしたのだろう?っていうことに関心をもってほしいです。達成したことよりも、それまでの過程が来場者のモチベーションとなってくれるといいなって思います。
ダンスも40代や50代、もしかしたら70代になっても逆立ちできたりするほうがスゴイって思えるし、むろんその努力を怠るつもりはありません。」
ニューヨークのストリートでパフォーマンスをフリーでやれば稼げそうなのですが、そういうのはやらないのですか?RIDE以外のパフォーマンスは考えてませんか?
「ストリートパフォーマーには縄張りもあって、パフォーマンスできる場所も認可のでてる場所以外は限られていて、取得も大変な上、労働時間に対しての対価が割にあわないのでほとんどやってないです。ポリスに捕まったという人の話も聞いたことがあります。
僕の場合、一つの場所にとどまるのは性格的にむずかしいので、日本とニューヨークを行き来するほうがあっているようです。長期的なことを考えずに飽きたら次に何をやろう?って感じです。
5月にアフリカへ行ってみようって思っていて、さらに肌に合う場所を探したいとも思っています。」
アメリカにとどまらず、アフリカへも活躍の場が広がるとなれば、さらに楽しい講演を聞ける日がやってくるにちがいない。
※1.EB-1 (Employment-Based First Preference)グリーンカード・カテゴリーとは、並外れた能力を持つ個人、卓越した教授や研究者、多国籍企業の経営者や管理職が対象となり、米国での合法的永住権(グリーンカード)取得が比較的早い。
【プロフィール】
中澤利彦(なかざわとしひこ)
2013年に、アーティストビザ(芸術家がアメリカで活動するためのビザ)を取得。アポロシアターのアマチュアナイトで2013年5月、2014年4月に優勝。FOXテレビの全米アメリカ人気ダンスコンペティション番組"So You Think You Can Dance1万5000人中の競技者の中からTOP100まで選ばれ、2013,2014年ともに最終オーディションまで残った。現在は所属しているダンスカンパニーでのパフォーマンス、アメリカ現地校でダンス講師、『THE RIDE』ストリートダンサー
【関連リンク】
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●Toshihiko Nakazawa Youtube
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com