NYで生きる!ワーキングマザーの視点
本業のクラウンからパペットにも舞台「眠れる森の美女」で挑戦!Marico
前編に続いて、アメリカで150年近く活動を続けていたサーカス団「リングリング・ブラザーズ(Ringling Brothers and Barnum & Bailey Circus)」にてクラウンとして巡業していた Marico。 後編では、実際に役を勝ち得たエピソードをご本人に語っていただいた。
Maricoは、NYのダウンタウンで行われた子供向け「眠れる森の美女」のザ・パント・プロジェクト(※1)の舞台で、 クラウンとしてつちかわれた楽しい表情でメインキャラクターの一人として出演。 かわいいガチョウのパペットを操作する役も担当。 ダンサーとしても長年トレーニングを積んできていたので、軽快なタップダンスを披露した。
どうやって今回の役は決まったのですか?
「去年もザ・パント・プロジェクトの舞台があって、アンサンブルで出演したので、今回も声をかけていただくことができました。 一緒に出演している若い子たちは、ミュージカルやシアターのパフォーマーを目指しています。
今年も一人一人を輝かせ、持ち味を引き立たせるジュリー(演出家ジュリー・アトラス・マズ)の演出は素晴らしかったです。 去年もダンサーそれぞれにスポットが当たり、短いモノローグがありました。」
では、去年の役はどうやって決まったのですか?
「去年はアンサンブル(役名のない登場人物)として猫役をいただいたのですが、その前の年に猫役のアンダースタディー(代役)だった友人が、 猫役のオーディションをしているというポスティングをしていたので、オーディションを受けることにしました。 タップダンスを披露したら、気に入られたようで、即決でした。
アンサンブルは普通、セリフがないのですが、『ステージで、4行ほどのセリフをタップしながら言ってもらえないかな?』と言われ、 やってみると、Show-Stopper(ショーが一時中断するほど拍手喝采を浴びる名演技)と評価をいただきました。
同公演では、準主役のアンダースタディーもまかされていたのですが、本番前のドレス・リハーサル(実際に衣装をつけて中断なしのリハーサルすること)で、 実際にその代役を務めました。英語のセリフもがんばって覚えて挑戦しましたが、『こんなにできるんだ』と驚かれました。
本番で演じている時も、エネルギーの放出量がハンパじゃなかったので(笑)
それらが買われたようで、今回は6月の頭に、『まりこが一番初めにオファーするキャストです』とメールで通知がきました。 アンサンブルではなく、パペットですが役つきのプリンシパル(主な演者)です。」
今年もショーに出ようと思った決め手はなんですか?
「オファーをくれたもう一つの理由として、パペットなら、本来、私がクラウンのお仕事をしているので、 やったことあるだろうと思っていたようです。実際は、やったことなかったのですが、 パペットとはいえ役付きなので、オファーを受けることにしました。ガチョウを動かすことに集中するはずが、結局ダンスもやることに。。。」
タップダンスを拝見しましたが、素晴らしかったです!演出家のジュリーさんに気に入られたのはMaricoさんの実力ですね。ジュリーさん、とても気さくな方のようですね。
「ジュリーは、去年から今年にかけてイギリスで公演された『となりのトトロ(※2)』にもパペットのアシスタントとして携わっていたんです。イギリス公演からギリギリで、こちらの公演のリハーサルへ戻ってくることができたので、よかったです。」
写真 左が演出家のジュリー・アトラス・マズ 右がMarico
イギリスでトトロって、好評だったそうですね。どおりで今回の舞台「眠れる森の美女」も、パペットのレベルが高いはずです。
「パペットのスペシャルエフェクト担当は、バジルさん(Basil Twist... Puppetry Designer and Director)だったのですが、今回ベルの、ちょうちょがヒラヒラするシーンはトトロにも出ていて、あのシーンには命をかけてるって感じです。
リハーサルでも、『ちょうちょの愛はどこにいったの?愛を与えてあげて。』って。チェックの幕がゆれる具合とか、パペットの動きだけではなく、速さや見え方といった背景の動きにもこだわります。
『空間が寂しいから、ここで飛んで。』ってリクエストがあり、ダンサーが飛んでたりすることもあって、美術的なセンスが面白いです。」
パフォーマーが宙返りしたり、ダンサーのジャンプも高くて、アクロバットのようでした。
「ショー全編でパペットやるのは、初めてだったのですが、 舞台上にいても共演者と目を合わせられないんです。 しかも、黒子の衣装ではなく、私のお気に入りとなった素敵な衣装だったので、自分のエゴを捨てて存在をガチョウに移すのが、初めはやや大変でした。
Lucy(ガチョウの役名)を作った人がプロのパペッター(Puppeteer) だったので、3回ほどプライベート・セッションをしたんです。それが大分、ためになりました。 動物は頭から動くとか、ガチョウの首が折れない様に動かすとか。
一回、稽古場来た時に『麻里子が先に反応しちゃってる。』と言われたのには、凄く響きました。そこから色々と気づいていって、のちに動きが変わりました。 私自身の感情をガチョウに伝達するのが、普通の流れなのですが、『私からではない。』と言われ。
やればやるほど奥が深くて、クラウンのフィジカル(身体)で表現するのと、つながる事がたくさんあって、 とても勉強になりました。
結果、舞台上で、黒子じゃなくしっかり衣装を身につけてることもあって、ついつい、ほかのキャストが私に話しかけてきたり、肩を触ってきたりして。
私自身もみんなと目を合わせたいのですが、そんなエゴを捨ててLucyに命を注ぎました。」
これぞNYという舞台なので、ぜひ会場へ足を運んでご覧いただくことをオススメする。チケットの購入リンク
(同記事掲載の写真はすべて©NY1page.com LLC)
岩佐 麻里子 Mariko Iwasa
※2:スタジオ・ジブリ作の人気アニメ「となりのトトロ」は、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)が「My Neighbour Totoro」の題で舞台化を手がけ、ロンドンのバービカン・シアターで2022年10月から2023年1月まで上演された。
著者プロフィール
- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com