最新記事
中東

トランプも恐れる「厄介な事態」に?...イスラエル・トルコが虎視眈々と狙う「新生シリア」で何が起きるのか

ALLIES COLLIDE: WHAT NEXT?

2025年4月23日(水)14時32分
トム・オコナー(外交担当副編集長)
イスラエルのネタニヤフ首相とトルコのエルドアン大統領

イスラエルのネタニヤフ首相(左)とトルコのエルドアン大統領(右) の思惑は? MAYA ALLERUZZO-POOL-REUTERS(左)MURAD SEZER-REUTERS(右)

<アサド政権崩壊から数カ月、シリアには既に「見えない境界線」が引かれている──アメリカの同盟国同士の綱引きで混迷するモザイク国家はどうなるのか>

シリア内戦が終わっても、中東は依然としてきなくさい空気に包まれている。イスラエルのパレスチナ自治区ガザで戦闘が続くなか、アメリカの2つの同盟国イスラエルとトルコが復興に向かうシリアを影響下に置こうと、激しいつばぜり合いを繰り広げているのだ。

イスラエルはガザを実効支配するイスラム組織ハマスと中東におけるイランの代理勢力を弱体化させて勢いづいている。昨年12月にバシャル・アサド前大統領が失脚し、混乱が広がるシリアに越境攻撃を仕掛けたのもその表れだ。

長年占領してきたゴラン高原の向こうにまでアラブ勢の侵入を防ぐ緩衝地帯を広げようというのである。

対してNATO加盟国のトルコは中東における地域大国の地位を固めつつある。シリア内戦中に建設したシリア北部の基地を今も維持し、内戦終結後はシリアの反アサド諸派との親密な関係を利用して、アサドを支援したイランとロシアに代わり暫定政府の後ろ盾になろうとしている。

トルコからの分離独立を求めて、長年シリアとイラクを拠点にトルコ政府を攻撃し続けてきたクルド人組織クルド労働者党(PKK)も3月、トルコとの停戦を宣言した。

ドナルド・トランプ米大統領は自身が描く中東和平構想の実現に向けて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が果たす重要な役割に言及している。

トランプの期待を背負う2人の指導者が危険なにらみ合いを続けるなか、シリアをめぐる双方の利害を調整しなければ、この2国の衝突でシリアは再び戦火に包まれかねないと、一部の有識者は警告している。

「イスラエルとトルコの間ではどこかの段階で、何らかの対立が起きる危険性がある」と、イスラエルのバル・イラン大学のエフラト・アビブ准教授は本誌に語った。「小規模な武力衝突すらあり得る」

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀、金融政策は維持の公算 利上げスタンスも継続へ

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報50.1に低下 サービ

ビジネス

インドネシア中銀、政策金利据え置き ルピア安定を重

ワールド

関税・貿易戦争、世界経済の秩序損なう 中国国家主席
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 9
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中