最新記事
トランプ

関税・経済の理解ゼロ、恐怖を煽る政治...トランプの暴走を止めるため反対派がとるべき「対抗策」

COUNTERING POLITICS OF FEAR

2025年3月31日(月)16時15分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)
トランプは有権者の心理を巧みに操ってきた

トランプは有権者の心理を巧みに操ってきた ANNABELLE GORDONーTHE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES

<アメリカの民主主義を壊し、独裁に走りかねないトランプ政権。民主党など反対派がとるべき、無知蒙昧の大統領を止める手段とは>

ドナルド・トランプ米大統領にたけていることがあるとすれば、それは大衆を扇動することである。有権者の恐怖と偏見をあおることで、自分や家族や取り巻きに利益をもたらし、そのほかほとんど全ての人に大きなダメージを与える極端な政策を実現する。そのために大衆の支持を獲得するべきか、それとも大衆の目をそらすべきかを、トランプは実によく心得ている。

関税政策の主張は、その好例だろう。いわゆる要素価格均等化定理によれば、自由貿易は生産要素(例えば労働力)の価格を国家間で均等化する傾向がある。だが、現実の世界には多くの変数があって、中国やベトナムの賃金水準が、近い将来、アメリカのそれと同等になることはまず考えられない。


一方、アメリカでは多くの労働者が、長年にわたる賃金の頭打ち状態に不満を募らせ、最近ではAI(人工知能)に仕事を奪われることにも怯えている。そんななか、自由貿易のせいでアメリカの労働者の賃金は押し下げられているとか、外国に雇用が奪われていると聞かされると、「そういうものなのか」と思ってしまう。

そこで「タリフ(関税)マン」の出番となる。トランプは、貿易相手国に「課税」すれば、これらの国がアメリカに「付け込む」のに待ったをかけ、アメリカの労働者を守れと主張する。

これは、トランプが国際経済学の初心者コースで教えられる関税の経済メカニズムを理解していないことを示している。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、米製品への残りの関税撤廃 トランプ関税

ビジネス

世界長者番付、マスク氏首位に返り咲き 柳井氏30位

ビジネス

再送-インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中