ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせる作戦か、戦争でタガが外れたのか
Taking No Prisoners: Why Russia Is Executing Ukrainian Captives
その模様を映した映像から、捕虜となった操縦士らは武装解除され、着衣をはぎとられ、整列させられて、射殺されたとみられる。これは明らかに、捕虜の待遇などを定めたジュネーブ条約に違反する重大な戦争犯罪だと、ウクライナの人権オンブズマンを務めるドミトロ・ルビネツは言う。
ウクライナ軍の元兵士で地政学アナリストのビクトル・コバレンコによると、ウクライナ軍が国境を越えてクルスク州に攻め込み、何百人ものロシア兵を捕虜にしたため、ロシア側は捕虜交換に「より柔軟」になり、ウクライナ側はより強気で交渉に臨める立場になっていたという。
「とはいえ、ウクライナ兵捕虜の処刑が増えた主な理由はそれでは説明がつかない」と、コバレンコは本誌に話した。「ロシアは、ウクライナ人を脅して、ウクライナ軍の動員を妨害しようとしているのだ」
ウクライナ議会は今年4月、兵員不足の解消を目指す「改正動員法案」を可決した。これにより、18歳から60歳までの男性は現住所や家族状況などの個人情報を軍に登録することが義務付けられ、避難先や転居先にも招集令状が来るなど、より徹底した動員が行われるようになった。