最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナ、愛国心と利益追求が支える戦時国債

2024年10月15日(火)10時31分
SNSで国債勧誘

「新しい国債を買いましょう。それは寄付のようなものです」と弁護士のオレシア・ミハイレンコ氏(30)は約1万4000人のソーシャルメディアのフォロワーに対し、ウクライナの戦時国債を購入するように呼びかけた。10月9日、キーウのカフェで撮影(2024年 ロイター/Thomas Peter)

「新しい国債を買いましょう。それは寄付のようなものです」と弁護士のオレシア・ミハイレンコ氏(30)は約1万4000人のソーシャルメディアのフォロワーに対し、ウクライナの戦時国債を購入するように呼びかけた。短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)で自身の国債のポートフォリオのスクリーンショットも公開した。

金融市場の知識を持ち、ウクライナ国債の初期投資家であるミハイレンコ氏は、ロシアとの戦闘に資金を提供するよう国民に奨励している政府の広範な取り組みに応じた。

ミハイレンコ氏は首都キーウ近郊のカフェでロイターに「これはまず国家を助ける方法であり、第2にかなり高い国債利回りを考慮すると、インフレから(ウクライナの通貨)フリブナ守る方法にもなる」と語った。さらに、フォロワーの多くが自身の助言に従って戦時国債に投資していると付け加えた。

戦闘が32カ月目に入ったウクライナにとって、国民に国債を買ってもらう必要性がますます高まっている。戦闘のための資金調達コストが膨らみ、ウクライナの財政にぽっかりと穴が空いている。防衛部門の資金を調達するため、年内に120億ドルを追加で確保する必要がある。

戦時中のため国際債券市場はウクライナに対して門戸を閉じており、S&Pグローバルはウクライナの外貨建て信用格付けを「選択的」デフォルト(債務不履行)と定義している。

ウクライナ政府は今年夏、200億ドル超の外貨建て国債を再編することで債権者グループからの承認を得た。返済負担の軽減は今後3年間で114億ドルとなる。

政府高官は財政赤字を縮小するためにロシアとの開戦後で初めてとなる増税を計画しており、国内市場でより多くの資金を調達する必要があると指摘している。

財務省によると、9月の国内借り入れは前月の2倍超となり、戦時国債289億ドルの発行を含めて724億フリブナ(18億ドル)を国債で調達した。

2025年の財政赤字は380億ドル程度を想定しており、海外からの資金援助は今後数年間に減ると予想されているため、国内でより多く借り入れる必要がある。

<国民と銀行の投資>

国債の主な買い手は商業銀行だが、ロシアの侵攻が始まってから国民と企業が戦時国債により多くの資金を投入している。

財務省はロイターに対して「国債に対する国民の関心は急上昇した」とコメントし、この傾向が続くとの見通しを示した。

財務省によると、個人による国債投資は10月初めに712億フリブナとなり、22年2月の255億フリブナ(6億2200万ドル)から急増した。また、個人投資家が国債ポートフォリオに占める割合は4%強だと説明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 被害状

ビジネス

アングル:中国本土株の投機買い過熱化、外国投資家も

ビジネス

スターバックス、中国事業の戦略的提携を模索

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中