最新記事
カナダ

リモート化で空室目立つオフィスビルは集合住宅へ

A Turning Point

2024年9月17日(火)14時32分
シャウナ・ブレイル、タラ・ビノドライ(共にトロント大学経営革新研究所准教授)
無人のオフィススペース

無人のオフィススペースは多用途化で有効活用 HELEN FILATOVA/SHUTTERSTOCK

<パンデミックで傷ついたカナダの最大都市トロント中心部の空室は待っていても埋まらない>

新型コロナウイルスのパンデミックは、カナダの最大都市トロントの都心部にも深い爪痕を残した。始まってから4年以上たつが、私たちは今もこの街の未来図を描けずにいる。

■【動画】中国の不動産大手が約15兆円を投じてマレーシア南部の人工島の上に作った巨大な街、「想定外すぎる」現在の姿

パンデミックの間、人々はオフィスに出勤できないので在宅のリモートワークに切り換えた。そしてパンデミックが収束した今も、出勤と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークを続けたいと思っている。この傾向が定着すれば都心部のオフィス需要は減り、飲食店や小売店を訪れる客も減る一方だろう。実際、トロント市内のオフィス稼働率は今年3月時点でパンデミック前の63%にとどまり、空室率は10%を超えている。

都心部のオフィスビルから徴収する固定資産税は自治体にとって重要な財源であり、これが減れば社会インフラの維持が困難になる。賃貸オフィスの解約や縮小が続けば、REIT(不動産投資信託)の損失も積み上がるだろう。

リモート機会では有数だが

どうすればいいか。オフィスビルの空室が埋まるのを待つより、別の用途に転用する道を探るべきではないか。空いたビルを集合住宅に改装すれば住宅難の解消につながる。再開発で住民や来訪者、そこで働く人に役立つ施設や雇用機会を創出する手もある。

うまくいけばトロントの都心部を、パリやロンドン、ニューヨークのような「15分都市」(職場にも商店にも病院にも徒歩か自転車で容易にアクセスできる街)に変えられるかもしれない。

現在のトロントは、カナダ国内でも有数のリモート/ハイブリッドワークの雇用機会が多い都市だ。しかし、このままだと都心部の空洞化を招く恐れがある。それを防ぐには、都心部の空間利用の多様化(手頃な集合住宅への転用を含む)が必要だ。


2024091724issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年9月17日/24日号(9月10日発売)は「ニュースが分かる ユダヤ超入門」特集。ユダヤ人とは何なのか/なぜ世界に離散したのか/優秀な人材を輩出してきたのはなぜか…ユダヤを知れば世界が分かる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

深セン日本人学校の児童死亡、中国に安全確保強く求め

ビジネス

独連銀総裁、銀行合併は「競争力ある金融機関生む必要

ワールド

台湾、米国等との協力で戦闘効率が向上=国防相

ワールド

米東海岸の港湾スト、実施されれば直ちに供給網混乱も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?
  • 3
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエルのハイテク攻撃か
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 6
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 7
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高…
  • 10
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 6
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 9
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 10
    世界に離散、大富豪も多い...「ユダヤ」とは一体何な…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 8
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 9
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中