最新記事
日本社会

過去30年で日本の格差は危険なレベルにまで拡大した

2024年3月21日(木)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

同じ方法で1992年の世帯収入ジニ係数を計算すると0.3790で、この30年間で格差が広がっていることが分かる。47都道府県別の数値も計算し、危険水域(0.4)を超えた県に色を付けた地図にすると<図2>のようになる。

newsweekjp_20240321042543.png


左右の地図の違いが大きい。1992年では世帯収入ジニ係数が0.4を超える県は10県だったが、2022年では大半の県が危険色に染まってしまっている。「失われた30年」における格差社会化の進行だ。2022年で最も高いのは高知県で0.4456となっている。

世帯の単身化・高齢化も背景にはあるが、それだけではないだろう。各県のジニ係数は、単身世帯や高齢世帯の割合とは相関していない。単身世帯の増加とて、結婚して家庭を持てない者の増加という、貧困の文脈でとらえることもできる。持てる者と持たざる者の格差が広がっていることは、多くの人が肌で感じているはずだ。

政府の役割は、所得の再分配によってこうした格差を是正することだ。相次ぐ増税で、国の税収は過去最高になっているが、近年の内訳を見ると、所得税や法人税よりも消費税が多くなっている。税金には累進性を持たせるべきであって、その逆のことをしている場合ではない。

<資料:総務省『就業構造基本調査』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、対話アプリ販売巡り提案 EUの制

ワールド

国防支出のギャップ縮小、NATO全加盟国の課題=独

ワールド

FRB、今後数年間で人員を約10%削減=報道

ワールド

イランと欧州3カ国、核合意巡り外交協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」にネット騒然
  • 4
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 5
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 6
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中