北朝鮮、幹部の「ご令嬢」女子高生ら20人が見せしめの刑に処された「禁断の遊び」
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<北朝鮮でも法の条文に「公開処刑」と明記するのは極めて異例。それでも当局が「見せしめ効果」に頼るほど問題視している行為とは>
北朝鮮で、今年1月の最高人民会議(国会に相当)第14期第8回会議で採択された「平壌文化語保護法」。北朝鮮の標準語である「文化語」を守るとの名目で、韓国式の言葉遣いを厳しく取り締まるものだ。
韓国デイリーNKは、この「平壌文化語保護法」の全文を入手した。2020年に成立した「反動思想文化排撃法」と合わせて、ドラマ、映画などの韓流コンテンツの流入に危機感を覚えた北朝鮮が、その排除にやっきになっていることがうかがい知れるものだ。
実際にこの1年間、北朝鮮当局は「言葉狩り」に血道を上げ、多くの若者が厳しい処罰を受けた。
この法律の最大の特徴は、違反者の最高刑を死刑とし、さらにその執行方法を「公開処刑」と定めている点にある。
第35条(公開闘争による教養)
社会安全機関をはじめとする該当法機関は、資料暴露や群衆闘争集会、公開逮捕、公開裁判、公開処刑などの公開闘争を様々な形式と規模で正常に行い、腐りきった傀儡文化に汚染された者どもの気を打ち砕き、広範に群衆を覚醒させなければならない。
法の条文に「公開処刑」と明記するのは、北朝鮮においても極めて異例だ。
公開処刑は人権侵害との国際社会の批判を受け、一時的に非公開処刑に切り替えていた時期がある。また、2019年の国連人権理事会の普遍的定期審査では、公開処刑の事実を認めつつ、死刑制度廃止及び公開処刑を禁止する勧告に対し、「公開処刑は一般に公開されず、非常に例外的に極端な犯罪にのみ適用される」と拒否した。
「平壌文化語保護法」による処罰は権力者でも容赦なし
しかし、実際は「見せしめ効果」を狙って、より残忍な形で行われることも少なくない。
同法はほかのどんな法律にも増して、「見せしめ効果」を狙ったものと言える。また第6条は、同法の違反者は例外なく厳しい処罰を受けるものと定めている。たとえ権力者やその家族であっても、決して容赦しないということだ。
実際に今年4月には、スポーツ合宿の休息中にしりとりゲームをしている中で、うっかり「禁断の言葉」を使った幹部令嬢の女子高生ら20人が懲役などの重い罰を受けた。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
しかしそれでも、デイリーNKの内部情報筋は法律の実効性に懐疑的だ。
「韓国映画で見た韓国の暮らしぶりは憧れの世界そのものだった。韓国の言葉遣いを根絶するのは難しいだろう。当局はチュチェ(主体)性、民族性を強調するが、韓国風の言葉遣いは自由の象徴であり、アクセントも柔らかい。そうした概念と言葉にとってかわる価値が国内で生まれ出されない限り、韓国式のものを淘汰するのは無理だ」
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩"残酷ショー"の衝撃場面)
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
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