死に絶える中東和平...ハマスとイスラエルの衝突の先にある「最悪のシナリオ」
度重なるイスラエル軍の爆撃で破壊されたガザ中心部のビル(10月13日) Saleh Salem-REUTERS
<ハマスの奇襲作戦「アル・アクサの洪水」はイスラエルに未曾有のパニックをもたらした。イスラエルのガザ地区への報復の爆撃もエスカレートし、地上侵攻も始まろうとしている。またもや希望を挫かれたパレスチナ人に残されるものとは──>
アラブ現代史においてパレスチナ人で最も偉大な詩人の一人、マフムード・ダルウィーシュの残した言葉がアラブ諸国のSNS上で再び注目され話題を呼んでいる。
戦争が終わり、握手を交わすリーダーたち
帰らぬ人となった息子をただただ待ち続ける婆さん
あの女性も愛しい主人を今も待ち続ける
子供たちも勇敢な父さんの帰りが待ち遠しい
誰が国を売ったのか知る由もない
けれど、その代償を払わされた者は確かにいた(見た)!
この現象は、イスラエルのガザ地区への無差別的な攻撃を受けてのものだ。
戦争にはいずれ終わりが来る。しかし終戦後に残される破壊の爪痕は計り知れない。戦争は人々の暮らしの全てを変えてしまい、命と国を守ることに必死となる。これこそ、戦争の本質である。
逃げ惑うガザの人々をテレビ画面越しに見て、戦争の理不尽さを改めて突き付けられる。
綿密に練られた作戦「アル・アクサの洪水」
1947年、国際社会はパレスチナ人が住んでいた土地をパレスチナ(アラブ国家)とイスラエル(ユダヤ国家)に分割し、エルサレムを国際管理下に置く決議を採択した。これにアラブ諸国が反発して第1次中東戦争が勃発。圧勝したイスラエルがパレスチナ人を追放し、90万人以上のパレスチナ難民が生まれる結果となった。エルサレムの西半分はイスラエル、東半分はヨルダン領に編入された。
その後、67年の第3次中東戦争でアラブ連合に勝利したイスラエルは、東エルサレムを含むヨルダン川西岸やガザ地区など今日「パレスチナ」と国際社会に呼ばれる地域を占領した。これは国連安保理決議242号で占領地と認められている。パレスチナ人を含むアラブ人は、この土地は不法に占領されたもので、本来はパレスチナのものだと訴えている。
今月7日にガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが「アル・アクサの洪水」と名付けた大規模な攻撃を仕掛けたにより、イスラエルは73年の第4次中東戦争以来、経験したことのない危機的状態に陥っている。
現地時間7日の午前6時過ぎ、ガザからテルアビブやエルサレム、南部の諸都市に向けて数千発のロケット弾が発射された。この「空からの援護」を利用する形で、ハマスの軍事部門「イズ・アルディン・アル・カッサム旅団」の戦闘員が分離壁を突破し、ガザ地区に隣接する町を襲撃した。作戦は綿密な準備の上で実行されたものだったことがうかがえる。
ハマスの占拠下でイスラエル軍の戦車や装甲車両が焼き払われる写真や動画が拡散され、イスラエル兵数十人が捕らえられた。これを受けて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にある」と宣言した。
イスラエル軍スポークスマンのリチャード・ヘクトは記者会見で、ハマスから町を取り戻すための戦闘が予想よりも長引き、2日以上かかったと認めた。「無敵の軍隊」としてのメンツが打ち砕かれる異例の事態となった。