最新記事
宇宙

中国、衛星1万3000基打ち上げ計画──スターリンク対抗で宇宙空間の「場所取り合戦」に

2023年3月8日(水)19時23分
青葉やまと

スペースXと中国当局とのあいだで、宇宙空間の「場所取り合戦」に発展する...... BlackJack3D/iStock

<限りある低軌道の「場所取り合戦」に参戦し、スターリンクの機先を制するという>

中国がスターリンクの対抗馬を開発している。まずは1万3000基を打ち上げ、最終的には4万基規模の通信網の完成を目指す。

いまや衛星通信と言えば、イーロン・マスク氏が率いる米スペースX社による「スターリンク」が代名詞的な存在となった。地上の利用者の電波を衛星が空から中継し、光ファイバーや携帯電話網に頼れない僻地や災害時のネット接続を可能にする。

スターリンクは昨年末の時点で、日本を含む45の国と地域でサービスを展開している。ユーザー数は100万人を達成した。現在までに約3000基の衛星を地球を周回する低軌道に投入しており、最終的には4万基からなるネットワークを構築する計画だ。

スターリンクと同等のネットワークを独自に構築

一方、今回明らかになった中国版の計画は、コードネーム「GW」と呼ばれる。スターリンクと同じく多数の衛星によって通信網を形成する「通信衛星コンステレーション」に分類される。

GWプロジェクトでは、低軌道におよそ1万3000基の衛星を投入すべく準備が進められている。最終目標は4万基の投入となっており、スターリンクと同水準の規模となる。また、現在スターリンクが投入済みの衛星数と比較すると、10倍以上の数だ。

中国は衛星測位システムでも、グローバル版のGPSではなく、独自の衛星を用いるシステム「北斗」を使用している。内製技術にこだわる中国として、独自の衛星コンステレーションの開発を急ぐ動きは不思議ではない。

米CNBCニュースの報道によると、中国政府は昨年10月、同国におけるスターリンクのサービス提供を控えるようイーロン・マスク氏に要請していた。

スターリンクの軍事利用を警戒か

スターリンクは、ロシアの侵攻を受けたウクライナでネットの生命線として機能している。中国側として、その存在感の大きさを警戒し今回の計画に至った模様だ。

GW開発のねらいについて、技術解説誌のポピュラー・メカニクスは、スターリンクの軍事利用を中国側が憂慮しての動きではないかと論じている。

記事によると中国は、スターリンクの衛星一つひとつの位置を追跡し把握したいと考えているという。

スペースXはロシアによる侵攻後まもなく、ウクライナに向けてスターリンクの利用を解放した。だが、結果として衛星網は、攻撃・偵察用無人機(ドローン)の操縦にも使われることとなった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が

ビジネス

独VW、リストラ策巡り3回目の労使交渉 合意なけれ

ビジネス

日産、米国従業員の6%が早期退職に応募 12月末付
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中