中国、衛星1万3000基打ち上げ計画──スターリンク対抗で宇宙空間の「場所取り合戦」に
スペースXと中国当局とのあいだで、宇宙空間の「場所取り合戦」に発展する...... BlackJack3D/iStock
<限りある低軌道の「場所取り合戦」に参戦し、スターリンクの機先を制するという>
中国がスターリンクの対抗馬を開発している。まずは1万3000基を打ち上げ、最終的には4万基規模の通信網の完成を目指す。
いまや衛星通信と言えば、イーロン・マスク氏が率いる米スペースX社による「スターリンク」が代名詞的な存在となった。地上の利用者の電波を衛星が空から中継し、光ファイバーや携帯電話網に頼れない僻地や災害時のネット接続を可能にする。
スターリンクは昨年末の時点で、日本を含む45の国と地域でサービスを展開している。ユーザー数は100万人を達成した。現在までに約3000基の衛星を地球を周回する低軌道に投入しており、最終的には4万基からなるネットワークを構築する計画だ。
スターリンクと同等のネットワークを独自に構築
一方、今回明らかになった中国版の計画は、コードネーム「GW」と呼ばれる。スターリンクと同じく多数の衛星によって通信網を形成する「通信衛星コンステレーション」に分類される。
GWプロジェクトでは、低軌道におよそ1万3000基の衛星を投入すべく準備が進められている。最終目標は4万基の投入となっており、スターリンクと同水準の規模となる。また、現在スターリンクが投入済みの衛星数と比較すると、10倍以上の数だ。
中国は衛星測位システムでも、グローバル版のGPSではなく、独自の衛星を用いるシステム「北斗」を使用している。内製技術にこだわる中国として、独自の衛星コンステレーションの開発を急ぐ動きは不思議ではない。
米CNBCニュースの報道によると、中国政府は昨年10月、同国におけるスターリンクのサービス提供を控えるようイーロン・マスク氏に要請していた。
スターリンクの軍事利用を警戒か
スターリンクは、ロシアの侵攻を受けたウクライナでネットの生命線として機能している。中国側として、その存在感の大きさを警戒し今回の計画に至った模様だ。
GW開発のねらいについて、技術解説誌のポピュラー・メカニクスは、スターリンクの軍事利用を中国側が憂慮しての動きではないかと論じている。
記事によると中国は、スターリンクの衛星一つひとつの位置を追跡し把握したいと考えているという。
スペースXはロシアによる侵攻後まもなく、ウクライナに向けてスターリンクの利用を解放した。だが、結果として衛星網は、攻撃・偵察用無人機(ドローン)の操縦にも使われることとなった。