受験地獄はもう遠い過去......時代は「大学全入」から「大学淘汰」へ
昨年春の大学受験の不合格率はわずか1.7%だった LuckyBusiness/iStock.
<2040年には受験生の約4割が現在の難関校に入れるようになる>
今年も受験シーズンになった。少子化の影響で受験競争は緩和されているというが、昔は「受験地獄」といわれるほど競争は激しかった。
40年ほど前の1980年11月、受験勉強に疲弊した青年が金属バットで両親を殺害する事件が起きた。当時、大学受験の2浪目だったというから、最初(現役時)の受験は1979年春だったことになる。同年の大学入学志願者は63万7000人で、大学入学者は40万8000人。差し引き22万9000人(35.9%)が不合格になっていた。筆者は1995年春の受験生だが、この年の不合格率も同じくらいだった。
だが近年では、「本当か」と疑いたくなるほど不合格率は下がっている。大学入学者数を合格者数、大学入学志願者数から大学入学者数を引いた数を不合格者数とし、両者の推移をたどると<図1>のようになる。統計がとれる1965年からの変遷図だ。
合格者数は青色、不合格者数はオレンジ色の面で示している。赤色の線は不合格率で、両者の合算に占める不合格者のパーセンテージだ。
この不合格率が大学受験競争の激しさの指標となるが、1960年代後半と1980年代末では4割を超えていた。人数が多い団塊世代と団塊ジュニア世代が受験に挑んだためだ。観察期間の中でのピークは1990年で、入学志願者88万7000人のうち39万5000人(44.5%)が不合格になっていた。
その後、不合格率は滑り台よりも急な角度で下がり、2000年には20%、2008年には10%を割り、直近の2022年春ではわずか1.7%だ。グラフを見ても、オレンジ色の不合格者の領分はほぼ無くなっている。「大学全入時代」の視覚化と言っていい。半分近くが落ちていていた1990年代初頭の「受験地獄」の頃とは隔世の感がある。