最新記事

健康

菜食中心の食事が男性の大腸がんリスクの軽減につながる可能性

2023年1月25日(水)17時33分
松岡由希子

菜食中心の男性は、大腸がんリスクが22%低かった...... krblokhin-iStock

<菜食を中心とする食事は、男性の大腸がんリスクを軽減できる可能性があることがわかった......>

大腸がんは世界で3番目に多いがんであり、生涯のうちに大腸がんを発症するリスクは男性で23人に1人、女性で25人に1人といわれている。野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツなど、菜食を中心とする食事は、男性の大腸がんリスクを軽減できる可能性があることがわかった。その研究成果は、2022年11月29日付の電子版医学誌「BMCメディシン」で発表されている。

菜食中心の男性は、大腸がんリスクが22%低かった

韓国・慶熙大学校、米ハワイ大学がんセンターらの研究チームは、1993年から1996年に「多民族コホート研究」に登録されたハワイ州およびカリフォルニア州の居住者を対象に、菜食を中心とする食事と大腸がんリスクとの関連性を調べた。対象者は男性7万9952人、女性9万3475人であった。

分析の結果、1日あたりの植物性食品の摂取量が多い男性は、植物性食品の摂取量が少ない男性と比べて、大腸がんリスクが22%低かった。その因果関係については明らかでないが、研究論文の筆頭著者で慶熙大学校のキム・ジヘ博士は「野菜や果物、全粒穀物などの植物性食品に含まれる抗酸化物質が、がんにつながる慢性炎症を抑制することで、大腸がんリスクの低下に寄与しているのではないか」と推測している。

また、この分析によると、女性では菜食中心の食事と大腸がんリスクに有意な関連性が認められなかった。キム博士は「男性は女性よりも大腸がんリスクが高い傾向にあるので、男性では菜食中心の食事が大腸がんリスクの低減と関連するが、女性では関連しないのではないか」と考察する。

女性ではこの関連性は見つからなかった

同様の研究結果は英国でも示されている。英オックスフォード大学の研究チームが「バイオバンク」に登録されている英国人47万2377人のデータを分析した2022年2月24日付の研究論文によると、肉の摂取量が少ない男性は大腸がんリスクが9%低かったが、女性ではこのような関連性は見つからなかった。

今回の研究結果は、健康的な菜食中心の食事が大腸がんリスクの低減と関連することを示すものだ。研究チームは、今後の研究課題として「人種や民族間で植物性食品の摂取と大腸がんリスクの関連性に影響をもたらす遺伝・環境因子を調べる必要がある」と指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中