「アルツハイマー病発症でもっとも危険な因子は?」改善可能だが、10年の調査でより顕著になったこと
米国では65歳以上の約9人に1人がアルツハイマー病に罹患している...... kuppa_rock-iStock
<カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームでは、長年、アルツハイマー病の危険因子の解明に取り組んできた......>
アルツハイマー病は認知症の症例のうち6~8割を占め、米国では65歳以上の約9人に1人が罹患している。アルツハイマー病の発症には様々な要因が関与しており、その危険因子として、遺伝因子と生活習慣や食生活などの環境因子に大別される。
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームでは、長年、アルツハイマー病の危険因子の解明に取り組んできた。
最も顕著な危険因子は中年期の肥満
2011年7月に発表された研究論文では、アルツハイマー病に対する改善可能な危険因子として糖尿病、中年期の高血圧、中年期の肥満、喫煙、抑うつ、低学歴、運動不足の7つを挙げて分析。その結果、最も顕著で改善可能な危険因子は運動不足であり、抑うつ、喫煙の順でこれに次いだ。
さらに研究チームは、2018年1月から12月に成人37万8615人から収集した「行動危険因子監視システム(BRFSS)」のデータを用いて最新のクロスセクション分析を行った。対象者のうち男性は48.7%で、65歳以上が21.1%を占めている。
分析の結果、アルツハイマー病の症例のうち36.9%は、改善可能な危険因子である運動不足、喫煙、抑うつ、低学歴、糖尿病、中年期の肥満、中年期の高血圧、難聴のいずれかと関連していた。また、これら8つの危険因子のうち1つ以上と関連するアルツハイマー病の症例は女性よりも男性でよくみられた。
なかでも最も顕著な危険因子は中年期の肥満で、運動不足、低学歴の順でこれに次ぐ。2011年の研究結果と比較すると、中年期の肥満がより顕著な危険因子となっている。
中年期の肥満がアルツハイマー病の発症に関連する研究は他にも
中年期の肥満がアルツハイマー病の発症に関連する可能性を示唆する研究結果は他にもみられる。英シェフィールド大学らの研究チームが2020年12月に発表した研究結果では、肥満によって脳の損傷や細胞喪失により脆弱になるおそれがあることが示された。
中年期の肥満がアルツハイマー病の直接的な原因とはいえないものの、健康的な体重を維持することで、その発症の可能性をある程度は下げられるかもしれない。