最新記事
アルツハイマー病

「アルツハイマー病発症でもっとも危険な因子は?」改善可能だが、10年の調査でより顕著になったこと

2022年12月28日(水)16時30分
松岡由希子

米国では65歳以上の約9人に1人がアルツハイマー病に罹患している...... kuppa_rock-iStock

<カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームでは、長年、アルツハイマー病の危険因子の解明に取り組んできた......>

アルツハイマー病は認知症の症例のうち6~8割を占め、米国では65歳以上の約9人に1人が罹患している。アルツハイマー病の発症には様々な要因が関与しており、その危険因子として、遺伝因子と生活習慣や食生活などの環境因子に大別される。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームでは、長年、アルツハイマー病の危険因子の解明に取り組んできた。

最も顕著な危険因子は中年期の肥満

2011年7月に発表された研究論文では、アルツハイマー病に対する改善可能な危険因子として糖尿病、中年期の高血圧、中年期の肥満、喫煙、抑うつ、低学歴、運動不足の7つを挙げて分析。その結果、最も顕著で改善可能な危険因子は運動不足であり、抑うつ、喫煙の順でこれに次いだ。

さらに研究チームは、2018年1月から12月に成人37万8615人から収集した「行動危険因子監視システム(BRFSS)」のデータを用いて最新のクロスセクション分析を行った。対象者のうち男性は48.7%で、65歳以上が21.1%を占めている。

分析の結果、アルツハイマー病の症例のうち36.9%は、改善可能な危険因子である運動不足、喫煙、抑うつ、低学歴、糖尿病、中年期の肥満、中年期の高血圧、難聴のいずれかと関連していた。また、これら8つの危険因子のうち1つ以上と関連するアルツハイマー病の症例は女性よりも男性でよくみられた。

なかでも最も顕著な危険因子は中年期の肥満で、運動不足、低学歴の順でこれに次ぐ。2011年の研究結果と比較すると、中年期の肥満がより顕著な危険因子となっている。

中年期の肥満がアルツハイマー病の発症に関連する研究は他にも

中年期の肥満がアルツハイマー病の発症に関連する可能性を示唆する研究結果は他にもみられる。英シェフィールド大学らの研究チームが2020年12月に発表した研究結果では、肥満によって脳の損傷や細胞喪失により脆弱になるおそれがあることが示された。

中年期の肥満がアルツハイマー病の直接的な原因とはいえないものの、健康的な体重を維持することで、その発症の可能性をある程度は下げられるかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

「ドイツ銀がリスクを軽視」、元行員の主張をECB検

ビジネス

午後3時のドルは156円後半、高値圏で売買交錯

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比+4.9% EVがガソ

ビジネス

10月百貨店売上は+4.3%で3カ月連続増、円安で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中