最新記事

統一教会

【寄稿:有田芳生】全国から91人の女性信者が旅館に集められ... 統一教会「政治秘書養成」秘録

A TAINTED TRAJECTORY

2022年9月14日(水)10時05分
有田芳生(ジャーナリスト、前参議院議員)

政治家への接近が強化されたのは、1986年だ。この年は中曽根康弘首相のもとで7月に衆参同日選挙が行われ、自民党が大勝した。

統一教会はこの年の8月、京都市嵐山にあった教団所有の旅館「嵯峨亭」で、秘書養成講座を開いた。私が1987年に取材で訪れたとき、玄関先には統一教会系の新聞「世界日報」が積んであった。

全国の女性信者たちはそれぞれの所属組織でまず「チャーム・コンテスト」をやるから面接に行くよう告げられた。東京・渋谷にあった統一教会の礼拝堂には西東京ブロックから50人ほど会員が集められ、4~5人を1つのグループにして面接が行われた。

そこでは「世間にお父様(文鮮明)を証(あか)していかなければならない」「代議士の秘書や世界平和教授アカデミー(統一教会のフロント組織)など、世間に溶け込む仕事がこれからは必要だ」と強調された。

面接に呼ばれたのは、身長が156センチ以上、できれば英会話ができること、さらに献身者(仕事や学業をやめ、統一教会の活動に専念する会員)である女性信者たちだ。

その後、全国から91人の女性信者が選抜され、嵯峨亭2階の大広間で統一教会の教えである原理講義や信仰講座が行われ、関西地方を「勝共カンパ」に歩いた。その後は神戸市須磨区にある統一教会の研修施設に集まり、10日間を秘書マナーの研修に充てた。接待の仕方、受け付けや名刺の渡し方、お茶の出し方、電話の応対、お辞儀の仕方のほか、ワープロや英会話の訓練も行われた。

再び嵯峨亭に戻ってからは、「話し方教室」でスピーチの仕方が教えられた。最後は神戸のポートピアホテルに集まり、まず評論家の那須聖(外交評論家で『救世主現わる』や『牢獄の救世主』など文鮮明を評価する著作を出していた)の講演を聞き、フランス料理のフルコースでテーブルマナーを学んだ。

研修に参加した信者たちには、記念に文鮮明夫妻の写真が入ったペンダントが贈られ、公設秘書、私設秘書として国会議員の元に送り込まれていった。

私がジャーナリストの山岡俊介の協力を得て、半年間の調査で明らかにした秘書の人数は、公設秘書が3人、私設秘書が5人だった。国際合同結婚式の参加者名簿と戸籍などを照らし合わせ、本人への取材を基に明らかにした。

この取材時に石原慎太郎議員(当時)には「少なくとも50人はいるよ」と言われた。石原自身が統一教会信者を秘書にしていたが、対立候補(当時は中選挙区制で自民党議員)に情報が筒抜けで、あるとき深夜の事務所で不審な行動を発見、本人に問いただし、解雇したと聞いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米司法省、ミネソタ州知事らを捜査 移民当局妨害の疑

ビジネス

米FRB副議長、パウエル氏支持を表明 独立性は「経

ビジネス

アングル:自動運転車の開発競争、老舗メーカーとエヌ

ワールド

米、ガザ統治「平和評議会」のメンバー発表 ルビオ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中