2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国
CAN CHINA OVERTAKE THE U.S. ECONOMICALLY?
経済改革は繁栄をもたらしたが、習政権の強権体質が裏目に(中央のタワーは上海のテレビ塔) PHOTO ILLUSTRATION BY SHUNLI ZHAO/GETTY IMAGES
<30年代には瞬間風速的にアメリカを抜くも、一人当たりの国民所得は少ないまま。先端技術で後れをとり、日本のような「貯金」もないままに急速な高齢化社会へ突入する、いびつな超大国が油断できない理由とは?>
中国で改革開放政策が実質的に始まった1979年に、経済規模で中国がアメリカを超える日が来ると予想した人はほとんどいなかった。
当時の中国のGDPは1780億ドルにすぎず、対するアメリカはその15倍だったから、そんなことを言えば愚か者とのそしりを免れなかったろう。
だが2021年、中国のGDPは17兆7000億ドルに達した。これはアメリカのGDP(約23兆ドル)の約77%に当たる。購買力平価(PPP)で換算した場合の中国のGDP(20年)は24兆2800億ドルとなり、アメリカの20兆9500億ドルを15%近く上回っている。
ドル建てのGDPには一般的にその国の国力が、PPPで換算したGDPにはその国の生活水準が反映される。つまり中国経済の未来に関する最も気になる問いは、中国がアメリカをドル建てGDPで超えることは可能かどうか、ということになる。
中国はいまだに中所得国だから、理論上は成熟した高所得国であるアメリカよりも伸びしろは大きい。
国民の平均値で比べた場合、所有にしても消費にしてもアメリカには及ばないから、つまりは需要の伸びも中国のほうが大きくなるはずだ。加えて技術力や、労働者の教育水準や生産性でも中国はアメリカの後塵を拝している。言い換えると、生産性の伸びしろはアメリカよりも大きい。
米政府の予測によれば、20~30年の10年間に米経済は年平均2.3%しか伸びないという。対照的に中国の年平均の経済成長率はアメリカを上回りそうだ。信用格付け機関S&Pグローバル・レーティングは同じ時期の中国経済の成長率を、アメリカのほぼ2倍の年平均4.6%と予測している。
しかし、たとえ中国がこれだけの成長率を達成できるとしても、31年の経済規模は27兆7200億ドルで、アメリカの28兆8500億ドルにはわずかに届かない。中国がさらに数年間、アメリカを2ポイントほど上回る成長率を維持できれば、30年代半ばにはアメリカを超えられるだろう。
「奇跡」の再来は望めない
もし中国が年平均5%の成長率を維持できれば、31年の経済規模は28兆8100億ドルとなり、アメリカとほぼ肩を並べることになる。つまりあと10年で世界一の経済大国の座をアメリカから奪うには、中国は年平均5%を超える成長を達成しなければならないわけだ。