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EUジャーナリストを恫喝・執拗な嫌がらせ訴訟から守る計画をEUが発表
汚職を追求したマシュー・カルアナ・ガリジアは爆弾によって殺害された REUTERS/Darrin Zammit Lupi
<スラップ(SLAPP、恫喝訴訟)防止指令により、EU加盟国は英国で下された判決の承認を拒否することも可能になる>
今週、欧州連合(EU)執行部は、汚職や不正行為の摘発に取り組むジャーナリストや運動家を、執拗な訴訟から保護するための措置を提案した。
欧州委員会はこの提案で、裕福な個人や企業が法律を利用して調査記者や非政府組織を脅したり黙らせたりしようとする、いわゆる「公的参加に対する戦略的訴訟」(Slapps)と呼ばれるものを標的にしている。この種の提案としては欧州で初と、英ガーディアン紙が伝えている。
草案によれば、EU域内のジャーナリストやNGOは、複数のEU加盟国が関与する「明白な根拠のない」裁判を破棄するよう裁判所に訴えることができるようになる。
また、欧州の名誉毀損の中心地と呼ばれるロンドンに対抗して、加盟国の裁判所は、非EU諸国からのスラップ訴訟の判決の承認や執行に対し、拒否することが可能になる。
EU当局によれば、EUは国境をまたぐ事件で、被告が裕福な場合に頻発する、自己に有利な法廷地を選んで原告が訴訟提起をする「フォーラム・ショッピング」を排除できると考えている。
一方で、拘束力のない別の勧告として、委員会は加盟国に対し、濫用的な訴訟の最も一般的な形態である国境を越えた要素のない煩わしい裁判を取り締まるよう求めてもいる。
脅かされる表現の自由と誹謗中傷
表現の自由の解釈が増幅し、それを悪意に濫用するような訴訟は近年ヨーロッパで急増しており、表現の自由に対する脅威が増し、司法制度や法の支配が変質しているという警告が人権専門家から発せられている。
2017年にマルタ共和国のジョゼフ・ムスカット首相の汚職を追求し続けていた調査報道ジャーナリスト、ダフネ・カルアナ・ガリツィアが殺害されたとき、彼女はロンドンの弁護士が関与したケースを含め、さまざまな企業人や政治家からの47の訴訟を抱えていた。
この時、彼女の長男で、悪用された訴訟に反対する全欧キャンペーンを主導している調査ジャーナリスト、マシュー・カルアナ・ガリジアは、スラップ(SLAPP、恫喝訴訟)が母の人生を「生き地獄」にしていたと語った。
「スラップは人生を狂わせる。キャリアも人生も台無しにされる。私の母がそうでした。他の多くのジャーナリストもそうだ」と彼はガーディアンに語った。
スラップ(SLAPP、恫喝訴訟)のせいで疲弊しているジャーナリストはかなりの数がいるとされる。昨年、イタリアのコリエレ・デラ・セラの犯罪記者チェーザレ・ジウッツィは、組織犯罪組織のメンバーやその親族、政治家、警察、企業関係者から50回以上訴えられたとして、公的イベントでの講演を断念することを発表した。
フェイスブックによると、これまで自分に不利な判決を下した裁判官はいなかったが、公の場で発言したことが原因で、不当な疑惑と戦うことに疲れ果ててしまったという。