最新記事

中国

習近平はウクライナ攻撃に賛同していない――岸田内閣の誤認識

2022年2月20日(日)11時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2月4日、プーチン大統領と会談した習近平国家主席 Sputnik/Aleksey Druzhinin/Kremlin/REUTERS

岸田首相が電話会談でプーチン大統領に「ウクライナ侵攻反対」を唱えたことに関して、同席者がそれを以て「中国とは逆のメッセージ」であると位置付けたようだが、習近平はウクライナ侵攻には賛同していない。中露蜜月以上に中国とウクライナの蜜月に注目すべきだ。

「岸田‐プーチン」会談同席者の発言

岸田首相は17日夜、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行った。岸田首相の「力による一方的な現状変更ではなく、外交交渉で受け入れられる解決方法を追求すべきだ」という言葉に対して、 プーチンは「ウクライナを侵略するつもりはない。対話での解決を望む」 と応じたそうだ。その後、会談の同席者が以下のようなことを言ったと産経新聞が伝えている。

―― 同席者は「ウクライナ侵攻に反対する立場をプーチン氏に伝えたアジアの首脳は日本だけだ。中国が逆のメッセージを出している中で意義があった」と振り返る。

文脈から行けば、「ウクライナ侵攻反対」の「逆のメッセージ」とは、「ウクライナ侵攻賛同」ということになろう。

「岸田‐プーチン」電話会談に同席したのだから、おそらくロシア問題に詳しい側近であると考えられる。そのような官邸関係者が、本気でこのようなことを考えているのだろうか?

もしそうだとすれば、国際情勢を分かっていないにもほどがあると言わざるを得ない。

中国とウクライナは仲良しで、ウクライナの最大貿易相手国は中国

中国とウクライナは、旧ソ連が崩壊した時点から仲良しだ。

これまで何度も書いてきたように、中国は旧ソ連が崩壊するのを待っていたかのように、崩壊と同時に一週間ほどで中央アジア五ヵ国を駆け巡り、1992年1月初旬には国交正常化を成し遂げていた。ウクライナは中央アジア五ヵ国には入ってないが、その勢いで中国は国交正常化を結ぶ国を増やしていき、ウクライナとも1992年1月4日には国交を樹立させている。

以来、中国とウクライナは親密度を増し、国交樹立30周年の節目に当たる2022年1月4日には、習近平はウクライナのゼレンスキー大統領と祝電を交換している。

2021年8月18日に中国商務部が発表した「中国はウクライナ最大の貿易国を保ち続けている」や中国国家統計局あるいは駐中国ウクライナ大使館などが発表したデータなどに基づけば、2021年の中国の対ウクライナ輸出額は前年比36.8%増で、輸入額は25.2%増と、いずれも20%を超える伸びを示し、輸出、輸入ともに過去最高となった。また2020年の両国間の貿易額は国交正常化後30年間で60倍以上に増えている。

軍事的にも中国とウクライナの緊密度は高い

中国とウクライナの緊密度は経済においてのみではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中