無人レジより新しい? 仏の大手スーパーで「おしゃべり奨励レジ」広がる コロナ禍の孤独対策で
このレジで会計を済ませる人たちは、列の後ろに並ぶ人の目を気にせずに、レジ係としばらく世間話をしてもいい...... euronews-YouTube
<長引くパンデミック中の孤独感軽減対策として「おしゃべり奨励レジ」を開設する動きがフランスで広まっている>
フランスでは、カルフールなど大手スーパー各社が、長引くパンデミック中の孤独感軽減対策として「おしゃべりレジ」を開設する動きが広まっている。このレジで会計を済ませる人たちは、列の後ろに並ぶ人の目を気にせずに、レジ係としばらく世間話をしてもいい、という趣旨だ。今年1月から始まったこの動きは全国に広がりを見せ、すでに150の「おしゃべりレジ」が開設されたという。
食料品店は、他人と交流ができる数少ない場所だった
これらのレジには「blabla caisses」のサインが出されている。blablaには「ペチャクチャ、騒がしくする」などの意味がある(英語にもblah blahという表現がある)。ヨーロッパではもともとレジ係と挨拶を交わす習慣があり、常連なら多少の会話もあったが、ロックダウン中「テキパキと買い物を済ます」ことが奨励されていた状態ではそれも憚られるようになった。だが一方で、食料品店はロックダウン中他人と交流ができる数少ない場所でもあった。
最も厳格なロックダウンの時期は過ぎたが、それでも3年目に突入するパンデミックのなか、顧客だけでなくレジ係の精神衛生をも考慮したうえで始められたのが今回の施策だ。後ろの人の目を気にせず世間話に興じることのできる「おしゃべりレジ」は特に高齢者に人気で、さらに顧客だけではなくレジ係にも「商品をゆっくり扱うことができる」との指摘のようだ。
セルフレジ、さらにはレジなしスーパーまで登場している現在、「おしゃべりレジ」は時代に逆行しているように見えるかもしれない。また、ヨーロッパのレジサービスは以前からもたつき気味だったため、「サービスがさらに悪くなる」と懸念する向きもあるようだが、さっさと支払いを済ませたい人は「おしゃべりレジ」を避ければ良いのだから、むしろスピードアップされるのではないだろうか(精算商品点数の少ない人向けの「エクスプレス・レジ」も大手スーパーでは以前から存在している)。
French supermarkets keep spirits high with 'chat-friendly' tills
孤独とどう付き合うか
パンデミックにおける心の健康や孤独との付き合い方は、今や重大なテーマだ。ロックダウン中のフランスでは、絶望した学生の自殺や、バゲット(フランスパン)を持って買い物中のふりをし5時間も外を歩き続けた人が逮捕される、などの事件があった(食料品購入は許可されていた数少ない外出理由の1つだったが、時期によって1日1時間などの時間制限があった)。
ロックダウンを経験していない日本ではいまだに「煩わしい人間関係がなくて楽」「1人が好き」「おうちが好き」などという声も耳にするが、約1年間閉じ込められ、大切な人たちとの時間を奪われ、知的な会話や芸術や身体的活動を禁止されることは、「1人が好き」というレベルの話ではない。