最新記事

中国

中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない

2022年1月20日(木)19時57分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

習近平中共中央総書記 Tingshu Wang-REUTERS

中国共産党政権が崩壊するとすれば、その最大のきっかけは「戦争」だ。だから台湾政府が独立を宣言しない限り、習近平は絶対に台湾を武力攻撃はしない。軍事演習は独立派への威嚇と国内ナショナリストへのガス抜きだ。

戦争を避けるために台湾経済界を取り込む

昨年12月3日のコラム<習近平、「台湾統一」は2035年まで待つ>に書いたように、習近平は台湾の「武力統一」はしないつもりで、2035年まで待って台湾経済界を絡め取って「平和統一」に持って行くつもりだ。

2030年頃には、中国のGDPがアメリカを凌駕していて、2035年頃には少なくとも東アジア地域における米軍の軍事力は中国に勝てなくなっているだろう。だから2035年まで待つ。これが習近平の長期戦略だ。

それまでに台湾経済を絡め取っていく戦略は、独立傾向が強い民進党の蔡英文政権が誕生してから積極的に動くようになった。

以下に示すのは、中国中央行政省庁の一つである商務部が出している『中国外資統計公報 2021』から引用した「台湾の対中投資推移(1990-2020)」だ。中国語を日本語に翻訳し、かつ本稿のために説明しやすいよう矢印や政権の文字などを書き入れた。

endo20220120190901.jpg
中国庶務部の『中国外資統計公報 2021』を基に筆者が作成

赤い矢印で示したのは、(「一つの中国」を受け入れる)親中的な国民党の馬英九政権が誕生した年と、(独立傾向の強い)反中的な民進党の蔡英文政権が誕生した年だ。

蔡英文政権が誕生した2016年5月以降、青色で示した「対中投資をしている台湾の新規企業数」が急増していることに注目していただきたい。

日本と同様に台湾でも「政冷経熱」が加速し、少なからぬ経済界は中国大陸、北京政府の方に近づいているのである。

馬英九政権の時は、馬英九(総統)が親中的だったため、中国は必死になって経済界を大陸の方に呼び込まなくても大丈夫だったが、民進党に入ってからは、むしろ必死になって台湾経済界を呼び込まないとまずいので、その結果がデータに表れている。

もし中国軍が米軍に勝てない状況が続いた場合

万一にも何かのアクシデントで大陸の軍隊(人民解放軍)と米軍が衝突した場合、もし近い時期であるなら、まず中国軍が負けて中国共産党による一党支配体制は崩壊する。だから台湾政府が独立宣言をしない限り、近い内に中国の方から戦争を仕掛けることは絶対にしない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中