最新記事

中国

100年前の建党時から中国共産党に貢献してきた日本

2021年6月24日(木)12時49分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そんなわけで1948年に、カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって書かれた『共産党宣言』(ドイツ語)を含めた多くのマルクスの書籍あるいは論文は、日本語版を中国語に翻訳したものが多い。

特に毛沢東の唯一の恩師である楊昌済は、1903年に日本に留学して弘文学院で日本語を学習した後、東京高等師範学校(現・筑波大学)に入学して1909年まで教育学を学んでいる。楊昌済は、毛沢東が通っていた湖南第四師範学校で教科書としてドイツ人哲学者、フリードリッヒ・パウルゼンが著した『倫理学原理』を使ったが、これは日本人の蟹江義丸がドイツ語から英訳されていたものを日本語に翻訳し、それを後に北京大学の学長となる蔡元培が日本語から中国語に翻訳したものだった。

この『倫理学原理』が毛沢東をマルクス主義へと誘(いざな)い、やがてはここから「マルクス主義の中国化」という中国共産党の柱となる論理が生まれていく。

日中戦争時に日本軍と結託した毛沢東

6月21日のコラム<中国共産党建党100周年にかける習近平――狙いは鄧小平の希薄化>で述べたように、毛沢東率いる中国共産党軍(紅軍)は蔣介石率いる国民党軍に追われて1934年に江西省瑞金に築いていた中華ソビエト政府を放棄して「長征」を始める。

1936年に中国共産党軍全軍が陝西省延安にたどり着くが、このとき中国共産党軍は貧乏のどん底にあった。

そこで毛沢東は周恩来の配下の藩漢年を遣わして張学長を誘い込み西安事変(1936年12月)を起こし、蒋介石を拉致して1937年から国共合作に追い込んだ。それにより国民党軍の禄を食(は)み、経費的に生き延びる道を求めた。その一方で国民党軍が戦っている相手である日本との結託を謀るのである。

1938年、中共のスパイ藩漢年を、今度は上海にある日本の外務省所管の岩井公館の岩井英一に接近させて、日本側に国民党軍の軍事情報を高く売りつけた。国共合作により国民党軍の軍事情報と共産党軍の軍事情報を共有することとなったので、国民党軍の軍事情報は容易に手に入る。それを日本側に売りつけて、日本軍が蒋介石・国民党軍を倒しやすいように仕向けていった。

毛沢東は共産党軍の軍力の70%は共産党軍の強化に充て、20%を国民党軍との妥協(協力)に充て、10%を日本軍との戦いに充てるという指示を出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBI新生銀のIPO、農林中金が一部引き受け 時価

ワールド

米下院がつなぎ予算案可決、過去最長43日目の政府閉

ワールド

台湾経済、今年6%近く成長する可能性=統計当局トッ

ビジネス

在欧中国企業、事業環境が6年連続悪化 コスト上昇と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中