100年前に虐殺を行ったと認めたドイツ...それでも「賠償」拒否の理由は?
ジェノサイドを認める会見を行ったマース外相 Tobias Schwarz/Pool via REUTERS
<植民地統治していた当時のナミビアでの集団虐殺を正式に認めたが、これで歴史問題が清算できるかは不透明>
ドイツ政府は5月28日、20世紀初頭に植民地統治下のナミビアで行った残虐行為を正式にジェノサイド(集団虐殺)と認めると発表した。ドイツ帝国に殺害された現地のヘレロ人とナマ人数万人は、当時の人口の75%以上とも言われている。
この行為の扱いをめぐり、両国政府は6年間にわたって交渉を続けてきた。ドイツ政府は今回の認定に加え、被害地域の開発支援のための基金を設立すると発表。マース独外相は声明でこう述べた。「われわれは現代の視点から、これらの出来事を正式にジェノサイドと呼ぶ。犠牲者の計り知れない苦しみを認めた証しとして、11億ユーロ(約1500億円)の復興開発プログラムでナミビアと犠牲者の子孫を支援したい」
西欧列強が数十年にわたりアフリカ全土で繰り広げた殺戮と収奪の影響は今も残っている。近年、旧宗主国はより積極的かつ正確に植民地支配の実態を認め、責任を引き受けるべきだという声が高まっているが、今回の発表もその流れに沿ったものだ。
だが全体的にみれば、旧宗主国の反応は鈍い。逆に「歴史の忘却」とも言うべき植民地時代への懐古主義が再び頭をもたげてきた国もある。例えばイギリスのジョンソン首相は、しばしば大英帝国による旧植民地の被害を矮小化して語っている。
一方、フランスのマクロン大統領は5月27日、訪問先の旧植民地ルワンダで行った演説で、1994年に80万人の死者を出したフツ人によるツチ人大虐殺について、フランスにも一定の責任があることを認めた。
1884~1915年にナミビアを植民地化していたドイツが土地の収奪に抵抗した数万人のヘレロ人とナマ人を殺害した事実を認めたことは、さらに一歩進んだ動きだ。当時この地域を統治していたドイツ軍のトップは、両民族の根絶を主張し、虐殺を生き延びた人々は砂漠の強制収容所に送られた。
この発表に対するナミビア側の反応は控えめなものだった。同国政府報道官は、「ジェノサイドが行われた事実をドイツ側が受け入れたことは、正しい方向への第一歩」だと指摘した。
犠牲者の子孫たちがその先に求めているのは、賠償金の支払いだ。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の犠牲者に比べ、自分たちに対するドイツ政府の謝罪と経済的補償は不十分だと彼らは主張する。