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結婚は女性にとって収入の「損失」?

2021年2月17日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

家庭を持った女性の稼ぎが少なくなるのは、どの国でも同じではないかと思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。<表1>は、日本を含む8カ国について、有業男女の平均年収(月収)を比べたものだ。

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男性をみると、どの国でも未婚者より既婚者の所得が高い。これは、結婚できる男性にはもともと有利な属性(高学歴、高収入)の人が多いからだろう。

注目すべきは女性で、こちらは国によって傾向が違っている。日本、韓国、ドイツでは「未婚>既婚」だが、他の5カ国では逆になっている。女性が結婚しても、稼ぎが減らない国だ。保育所が充実していて、シッター等のサービスを手軽に使えるためだろう。スウェーデンでは、希望する親に保育所の枠を用意するのは自治体の義務だ。

日本の既婚女性の稼ぎは未婚者の7割にも満たず、その差が際立っている。言葉が適切かどうかは分からないが、結婚の損失が大きい社会だ。これを致し方ないことと諦めてはいけないことは、国際比較のデータで実証される。まずは保育の機械的な一律無償を見直し、捻出した財源で保育士の待遇を改善して、保育の量・質を改善することからではないだろうか。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    「Religion IV - ISSP 2018」

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