最新記事

待遇格差

約半数が月収20万未満の超薄給......幼稚園教員・保育士の「生活が成り立たない」現実

2019年12月11日(水)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

なぜ保育士が集まらないか、それは生活が成り立たぬほどの超薄給だから maroke/iStock.

<幼稚園や保育所で就学前教育に従事する教員、保育士の給与レベルは極めて低く、月収20万円未満の薄給率が50%前後と異常に高い>

幼稚園や保育所での教育(保育)は、就学前教育とくくられる。就学前教育は義務ではないが、幼稚園・保育所の在籍者は増えていて、1960年では143万人だったのが、2017年では367万人に膨れ上がっている。0~5歳人口に占める割合にすると15%から62%への激増だ。

内訳を見ると、現在では幼稚園児より保育園児の方が多い(昔は逆だった)。共働き世帯の増加により、早い年齢から長時間預かってくれる保育所への需要が増しているためだ。需要増があまりに急激なので希望しても入れない「待機児童問題」が深刻化している。

保育所を増やすには「土地・建物・ヒト」が必要だが、確保に難儀しているのは「ヒト」だ。保育士不足で定員を増やせないでいる保育所は数多い。なぜ保育士が集まらないか。それは、生活が成り立たないほどの超薄給だからだ。2016年の統計によると、保育士の平均月収は21.6万円で、半数近くが月収20万未満となっている。

data191211-chart01.jpg

<図1>によると、就学前教育を担う人材の待遇の悪さが際立っている。小学校以降との落差が大きく、平均月収は10万円以上、月収20万円未満の薄給率に至っては大差が生じている。教員の年齢構成や学歴構成の違いにもよるが、この格差は酷い。人格の礎が築かれる乳幼児期の教育(保育)には、高い専門性が求められる。それにもかかわらず、ここまでの給与差があるのは何とも不可解だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米経済指標「ハト派寄り」、利下げの根拠強まる=ミラ

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中