最新記事

動物

犬の年齢をヒトの年齢に換算するための新たな計算式が明らかに

2019年11月25日(月)15時00分
松岡由希子

「犬の年齢に7をかける」じゃなかった...... Vasyl Dolmatov-iStock

<「犬の年齢に7をかける」じゃなかった。犬の年齢をヒトの年齢に換算するための新しい計算法がこのほど明らかに......>

長年、「犬はヒトの7倍のスピードで成長する」とされてきた。犬の1年はヒトの7年に相当するというものだ。しかし、犬の年齢はこれほど単純に算出されるものではない。犬の年齢をヒトの年齢に換算するための新しい計算法がこのほど明らかとなった。

遺伝子ゲノムDNAのメチル化に着目

哺乳類は、幼年期から青年期、老年期を経て死に至るまで、同様の生理学的段階をたどる。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、老化に伴って進行する遺伝子ゲノムDNAのメチル化に着目して犬とヒトとを比較し、2019年11月4日、「犬の実年齢の自然対数を16倍して31を加えた数値が、ヒトの年齢に換算した犬の年齢である」との研究論文を公開した。


人間に換算した年齢=16ln(犬の年齢)+31

ヒトも犬も、加齢に伴ってDNA分子にメチル基が付加し、DNAそのものは変えずにDNA断片の機能を変化させる。このようなDNAメチル化は「エピジェネティック時計」と呼ばれ、ヒトの生物学的年齢の推定に用いられることがある。

研究チームは「エピジェネティック時計」を犬にも応用し、ヒトの「エピジェネティック時計」と比較。生後1ヶ月から16歳までの犬104匹の血液サンプルと1歳から103歳までのヒト320名の血液サンプルを分析し計算式を導き出した。

matuoka1125bc.jpg

なお、対象となった犬のほとんどは、ラブラドールレトリバーであった。この計算式によれば、犬の生後7週間はヒトの生後9ヶ月に相当し、子犬も乳児も歯が生え始める。また、犬の12歳はヒトのおおよそ70歳にあたり、平均寿命もほぼ一致している。犬はヒトよりも早く性成熟に達するため、青年期から中年期までの期間は一致せず、犬の5歳はヒトのおおよそ56歳に相当するが、犬のDNAメチル化は加齢に伴って遅くなるため、ヒトの生物学的年齢が犬に追いついていくという。

犬種によって換算式が変わる可能性も......

米ワシントン大学のマット・カウバレイン教授は、学術雑誌「サイエンス」に「犬がヒトと同じような病気にかかり、機能が低下することはすでにわかっていた。この研究成果は、加齢において同様の分子変化が起こっていることを示すものだ」とコメントを寄せ、一連の研究成果を評価している。

ただし、この新たな計算式は、主にラブラドールレトリバーをもとに導きだされたものであるため、他の犬種でも一概に適用できるとは限らない。犬種によって寿命が異なるため、ヒトの年齢に換算する計算式も異なる可能性はある。犬の年齢をヒトの年齢に精緻に換算するためには、今後、別の犬種でもDNAメチル化の分析が必要となるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送イラン、イスラエル報復攻撃開始 数百発のミサイ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、中東緊張で安全資産に資金流

ワールド

米軍、ミサイル撃墜でイスラエルを支援=当局者

ワールド

ロシア大統領、イスラエル・イラン首脳と個別電話会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 5
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 6
    メーガン妃がリリベット王女との「2ショット写真」を…
  • 7
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 10
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 7
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中