最新記事

動画配信サービス

アップルが「Apple TV+」1年間無料で仕掛ける動画配信戦争

2019年9月17日(火)18時00分
佐藤由紀子

<Appleは9月10日に「iPhone 11」などの新製品を発表したが、動画配信サービス「Apple TV+」が話題だ......>

Appleは9月10日に本社キャンパスの「スティーブ・ジョブズ・シアター」でスペシャルイベントを開催し、「iPhone 11」などの新製品を発表した。このイベントでは、Appleオリジナルの動画コンテンツを月額制で提供する定額サービス「Apple TV+」の価格と開始時期も明らかになった。

11月1日から、月額5ドルでスタートする。日本でも同日、月額600円でのスタートだ。ティム・クックCEOは「DVDを1枚レンタルするより安い。クレイジーだね」と語った。

対ディズニー、「後出しじゃんけん」の価格とスタート時期

確かに、同様の定額動画サービスより戦略的な価格だ。Netflixの最も安価なプランは月額9ドル(日本では800円)、Huluは6ドル(広告付き。日本での最低価格は933円)だ。

そして、Walt Disneyが4月に発表し、11月12日に米国などで開始する「Disney+」は月額7ドル。Appleの発表した価格とスタート時期は、まるでDisney+に対する"後出しじゃんけん"のようだ。

Walt Disneyのボブ・アイガーCEOはAppleのスペシャルイベント当日、8年務めたAppleの取締役を辞任した。Apple TV+自体は6月に発表されていたが、10日のイベントでその本気度が明らかになり、Disney+と競合することがはっきりしたためとみられる。

定額動画サービスは、価格だけでなく、キラーコンテンツがあるかどうかが重要だ。HBOのオリジナル作品「ゲーム・オブ・スローンズ」の大ヒットは記憶に新しい。その点では、Pixar、Lucas Film、Marvel、National Geographics、21st Century Foxなどを傘下に持つDisneyは盤石だろう。

一方のAppleも準備に抜かりはない。SFやサスペンス、スヌーピーの新作などのオリジナルでアピールしている。架空世界の物語「SEE」のトレーラーは、まるでゲーム・オブ・スローンズの1場面のようだ。

「SEE」のトレーラー


無料で1年間、の破格

Appleは、自社製ハードウェアをプロモーションに使えるという強みも持っている。新しいiPhone、iPad、iPod touch、Mac、Apple TVを購入すると、Apple TV+を無料で1年間楽しめることになっているのだ。例えば1万9800円の「Apple TV 4K」を買えば、7200円分のApple TV+を無料で視聴できることになる。お試し期間が3カ月というサービスは多いが、1年間は破格だ。

Apple TV+を視聴するには、Appleのハードウェアで稼働する「Apple TV」アプリが必要だ。Apple TV+見たさでApple製品を初めて購入する、というケースは考えにくいが、一度Apple TV+を利用したユーザーは、Appleのハードウェアから離れにくくなるだろう。

定額動画サービスのシェア争いで、Appleがトップに立つことはないかもしれないが、ハードウェア販売との相乗効果は見込めそうだ。

(※9月18日、追加修正いたしました)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中