米サイバー軍はイラン革命防衛隊に報復攻撃したのか
米国防総省が公開した不発の機雷を除去するイラン革命防衛隊とされる画像 US Navy/REUTERS
<ホルムズ海峡付近で原油タンカー2隻が攻撃された事件の報復として、米サイバー軍はイラン革命防衛隊と関連するスパイ集団にサイバー攻撃を仕掛けたと報じられている>
「サイバー攻撃」と言葉が広く知られるようになってから久しい。「サイバー攻撃」とは、金銭などを目的とした犯罪行為と、国家によるスパイや破壊工作など安全保障の問題の、大きく2つに分けられる。
そして私たちがニュースで頻繁に目にするサイバー攻撃は、犯罪行為とみられる攻撃が圧倒的に多いように感じる。ただ犯罪とは一線を画したサイバー攻撃も頻発しているのが実態だ。特に国際情勢にからむ安全保障の裏側で、サイバー攻撃が実施されることが当たり前のようになっている。
ここ最近では、香港の大規模デモで中国の国家的なサイバー攻撃が指摘されている。この問題は、香港政府による「逃亡犯条例」の改正案が、香港で逮捕された人たちを中国本土に移送できるようになるとして市民から大きな反発が出てデモに発展した。このデモに関わった人たちが使っていたスマートフォンのアプリのサービスを妨害するようなサイバー攻撃が中国本土から行われたとみられている。
さらに直近では、アメリカと緊張関係が高まっているイラン情勢の裏でも、サイバー攻撃が行われたと報じられている。中東のオマーン湾で日本企業が運航するタンカー「コクカ・カレジアス」が何者かに攻撃を受けた事件を受け、米サイバー軍はイラン革命防衛隊と関連するスパイ集団に対してサイバー攻撃を実施したと報じられている。このスパイ集団が、今回のタンカー攻撃に関与したという。
またイランのミサイル発射システムにもサイバー攻撃が行われているという。ちなみにミサイルシステムを妨害するサイバー攻撃については、アメリカは過去に北朝鮮に対して「Left-of-launch(発射寸前)」攻撃という作戦を行なっており、実績がある。
実はイランとアメリカの間のサイバー攻撃はこれまでも頻繁に起きている。
2018年3月には、イランのイスラム革命防衛隊とつながりのある「マブナ研究所」に関わるイラン人ハッカー9人が米司法省によって起訴された。ハッカーらは2013年から5年にわたって、イスラム革命防衛隊のために、世界中の320校に及ぶ大学で、7998人の教授らにサイバー攻撃を実施した。そして研究論文や研究内容、知的財産など31.5ギガバイトに及ぶデータを盗み出していた。
この直後にも、日本を含む14カ国の76の大学が、イランのハッキング集団によって攻撃を受けていたことが判明している。
また2019年3月には、アメリカの200以上の企業へ大規模なサイバー攻撃を仕掛け、企業の知的財産や内部情報を盗んだり、パソコンのデータを完全に消し去るといった工作を行ってきたことも明らかになった。イランは、ライバル国の大手企業を攻撃してデータ削除するサイバー攻撃を過去にも行なっている。2012年にはライバル国であるサウジアラビアの国営石油企業サウジ・アラムコに大規模なサイバー攻撃を仕掛け、サウジ・アラムコでは3万台におよぶパソコンがウィルスに感染し、ほとんどのデータが削除されている。
2016年には、7人のイラン人ハッカーらが米司法省によって起訴されている。ハッカーらはニューヨーク証券取引所や通信会社、銀行などに営業を妨害する目的でサイバー攻撃を実施したという。さらに2013年に米ニューヨーク州のダム施設をハッキングしようとしていたことも判明している。