最新記事

ペット

犬連れ参拝客に人気の神社が「ペット連れ禁止」の苦渋の決断

2019年6月24日(月)17時30分
内村コースケ

写真:内村コースケ

<神様の使いとして狼を祀り、「お犬さま」などと親しまれていることから、犬連れの参拝客に人気がある埼玉県秩父市の三峯(みつみね)神社が、7月1日より、ペット連れでの境内への立ち入りを禁止する。一部の参拝客のマナー違反が続いたための苦渋の決断だったようだ。正式に禁止となる前に、長年ペット取材を重ねている筆者が、犬のしつけのインストラクターらと共に同神社を訪問し、公共の場での飼い主の心構え・マナーを再考した>

「黙認」から禁止へ

三峯神社は、6月4日付で、ホームページ上で次の告知を行った。


・ペット連れでのご参拝に関して

当社では、長年にわたり境内(社殿等の建物以外)へのペット同伴を黙認して参りました。
特に神様の使いとして狼を祀り、古くから「お犬さま・山犬・御眷属様」と親しまれており、殊更身近な存在で、神社としても大切に考えております。

しかしながら今般、一部の方の心無い振舞いにより信仰の場としての神社の尊厳維持が困難になりかねない事態が起き、熟慮を重ねた結果、誠に遺憾ながら令和元年7月1日より、ペット連れでの境内立ち入りをお控えいただくことを決定させていただきました。

ここで注意しておきたいのは、「これまで許可されていたのに突然禁止になった」というニュアンスではなく、「黙認していた神社が、正式に禁止を表明した」と受け止めた方が正確であろうということだ。告知文には、続きがある。


ご参拝を楽しみにされていた皆様方には大変申し訳なく、またペットを連れてお越しの方の殆が周囲に気を配られ、穏やかに境内でお過ごしいただいていたこともあり、神社としても断腸の思いであります。

歴史ある神社境内の信仰環境護持・清浄の維持は神社職員にとり重要な務めゆえ、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

※盲導犬・聴導犬・介助犬等の補助犬につきましては今までどおりお入りいただけます

筆者は犬を飼っており、ペット雑誌での写真撮影と記事執筆、入店拒否問題を含むアイメイト(盲導犬)の撮影・取材を長年重ねている。同神社は、上記の声明以上のコメントはしないとしているが、筆者の取材経験上、糞尿の処理を怠るなどのマナー違反が積み重なった結果であることは、容易に察することができる。

MJ056.jpg

三峯神社参道手前にあった告知看板

犬と共に参拝する喜びも・・・

MJ046.jpg

長年の三峯神社ファンだった藤岡さんは、一部の飼い主のマナー違反を残念に思っている

三峯神社へは、かれこれ10年以上前に、当時飼っていた老犬と一緒に参拝したことがある。今回は、7月1日を迎える前に再訪しておこうと、犬のしつけのインストラクターの川原志津香さんと、長年の三峯神社ファンである藤岡亮さんという友人2人と現地で待ち合わせて参拝することにした。川原さんたちを誘ったのは、全国の観光地や公共の場で起きているマナー違反の問題について、あらためて共に考えたいという思いもあったからだ。

藤岡さんは、生涯の伴侶として犬を選んだ筋金入りの愛犬家で、日本では珍しい大型犬種、ベルジアン・シェパード・ドッグ・グローネンダールと2人暮らし。大型のワンボックスカーで日本全国を犬連れで旅しており、三峯神社もしばしば訪れている。

「多い時は年に3、4回、少なくとも1回は来ていました。森の中を歩く雰囲気が好きなんです」と藤岡さん。「お犬さま」の愛称から、僕はペットフレンドリーな神社というイメージを持っていたが、藤岡さんによれば実情は少し違うようだ。「犬OKな神社でも温度差があって、犬好きな神主さんがいるような神社では、職員の人がフレンドリーに声をかけてくれることもあります。ここは、そういう意味ではウェルカムと言うより、『空気のような扱い』ですね」

「ペットOK」ということではなく、声明文にある通り、まさにグレーな「黙認状態」が続いてきたということなのだろう。僕自身も間違ったイメージを持っていたように、その点の履き違えも、少なからず犬連れ参拝客の間にあったのではないだろうか。「むしろ歓迎されているのだから、何をしてもいい」という深層心理が、一部の飼い主にあったことは否定できない。「犬連れがすごく多いので、やっぱりところどころにウンチが落ちていたり、小型犬をロングリードで歩かせていたり・・・。あるいは、仮に祝詞を上げている時に犬がキャンキャン吠えていたら台無しですしね」と、藤岡さんは残念がる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中