最新記事

顔認証

サンフランシスコ市が、顔認証システムの使用を禁止へ 

2019年5月16日(木)15時30分
佐藤由紀子

サンフランシスコ国際空港は連邦政府管轄下のため適用外 sefa ozel-iStock

<サンフランシスコ市議会は、米国の地方自治体としては初めて、公共機関による顔認識システムの導入を禁ずる条例案を可決した>

米カリフォルニア州サンフランシスコ市議会は5月14日、公共機関による顔認識システムの導入を禁ずる条例案を可決した。米国の地方自治体としては初となる。この条例案は賛成8、反対1、棄権2で可決した。来週再度投票が行われ、正式条例になる見込みだ。

この条例により、サンフランシスコ市の警察や市営交通機関を含むすべての地方機関は今後、顔認識システムが導入できなくなる。また、ナンバープレートリーダー、DNA解析などを含むあらゆる監視技術を新たに購入する計画に市の承認が必要になる。

ただし、港や空港など連邦政府管轄下にある施設や私企業、個人には適用されない。サンフランシスコ国際空港も、米国土安全保障省(DHS)が顔認識システム「Biometric Air Exit」を設置した15の国際空港の1つで、条例案の適用外となる。

(参考記事)アメリカの空港で全面導入が進む顔認証システム プライバシー懸念も

「顔認証技術と健全な民主主義は両立しない」と反対派

顔認識技術に一貫して反対しているアメリカ自由人権協会(ACLU)の技術顧問、マット・ケイグル氏は声明文で「この投票により、サンフランシスコ市は、顔認証技術と健全な民主主義は両立せず、ハイテク監視導入には市民に発言の機会を提供する必要があると宣言した」と語った(CNNの記事より)。

ACLUは、顔認識システムは他の多くの生体認証システムと異なり、一般的なビデオカメラと組み合わせることで対象者の同意なしに使用できる監視システムに繋がると指摘する。こうしたハイテク監視を許せば、デジタルプロファイリングが容易になり、活動家の発言が抑制されると主張する。「この条例は、人種的に偏った技術である顔認識の脅威が高まっていることを考えると、いっそう重要だ」(ACLUによる条例可決を求める書簡案より)

犯罪防止団体は導入を支持

一方、顔認識システム導入を支持するサンフランシスコの犯罪防止団体「Stop Crime SF」は声明文で、現在の顔認識技術に問題があることは認めるが、今後技術が向上すれば公共の安全のための有益なツールになる可能性があるとし、「完全な禁止ではなく、実施の猶予がより適切だったと確信する」と語った。

現在、顔認識技術や人工知能の使用に関する米連邦法はまだない。だがイリノイ州では、企業が顧客からバイオメトリックデータを集める際に、事前に同意を得ることを義務付ける法律があるなど、州政府の中には関連する取り組みを始めたところもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で

ビジネス

米相互関税は世界に悪影響、交渉で一部解決も=ECB

ワールド

ミャンマー地震、死者2886人 内戦が救助の妨げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中