「平成最後の日」に見た「令和に受け継がれてゆく桜」
写真:内村コースケ
<平成最後の日となった2019年4月30日、長野県の蓼科高原で、「平成最後の桜」を撮った。標高差がある当地では、平成最後の同じ日に、散りゆく桜とこれから満開を迎える咲き始めの桜の共演が見られた。その姿が象徴するのは、一時代の「終わり」ではなく、2つの時代を繋いでいく「希望」なのかもしれない>
GWに見頃となる蓼科高原の桜
標高1,000〜1,800mの八ヶ岳山麓に広がる蓼科高原エリアでは、毎年ゴールデンウィークに桜が咲く。今年は4月の後半に雪が積もるなど春の訪れが遅れてはいるが、麓の市街地から徐々に桜前線が上がってきている。筆者は、東京からこの地に移住して8年になるが、春の訪れ=GWという感覚がすっかり染み付いている。 北海道・青森などの北日本でも同時期に桜の開花を迎えるが、約1ヶ月前に花見を終えた首都圏・中部圏・関西圏の人たちが日帰り圏内で「2度目の花見」ができる地域は、他にそう多くはないだろう。
山岳地帯の手付かずの自然が多く残る蓼科では、山肌にポツポツと咲く山桜も美しいのだが、平成の最後の日には開花が間に合わなかった。一方、「日本の桜」と言えば、園芸品種のソメイヨシノだ。蓼科でも古くからの集落の一角や湖畔、寺の境内などで花を咲かせる。また、県内の高遠(たかとお)城址公園(伊那市高遠町)に群生する「高遠コヒガンザクラ」は、蓼科にも多く植えられていて、その濃いピンク色の花はソメイヨシノよりも少し早く咲く。

ソメイヨシノと高遠コヒガンザクラの名所へ
2019年4月30日、平成最後の日をどうやって過ごすか。僕は、せっかく桜の見頃を迎える蓼科にいるのだから、日本の歴史そのものである「元号」が変わる節目に、日本の文化と自然を象徴する「桜」と向き合いたいと思った。 蓼科エリアで最も有名な桜の名所は、蓼科湖(標高1,250m)の向かいにある聖光寺のソメイヨシノである。ここは外せないスポットだが、もう一カ所、知る人ぞ知る高遠コヒガンザクラの名所がある。この2カ所を、カメラを手に回ってみることにした。
高遠コヒガンザクラの並木があるのは、山梨県境寄りの諏訪郡原村の中心部にある深叢寺(しんそうじ)という臨済宗の寺だ。お寺があるあたりは、標高1,100mほどなので、1,000m付近の里の桜が散り時を迎えている今頃は、ちょうど桜吹雪が見られるかもしれない。散り際の桜は「平成最後の桜」にふさわしい。 一方、標高がさらに100mほど高く、開花がやや遅い聖光寺のソメイヨシノは咲き始めといったところだろうか。こちらは「平成と令和をまたぐ桜」のイメージである。