最新記事

BOOKS

故ホーキング博士、遺伝子操作による「超人間」の誕生に懸念:遺作エッセイが出版

2018年10月19日(金)16時10分
高森郁哉

ホーキング博士が答える10の「大きな疑問」 Lucas Jackson-REUTERS

<スティーブン・ホーキング博士の遺作のエッセイ集が出版され、「神は存在するか」「未来は予測できるか」など10の疑問に答えている>

近い将来、遺伝子操作によって身体的に改良された「超人間」が誕生し、既存の人類が絶滅に追いやられるおそれがある――。今年3月に他界した物理学者スティーブン・ホーキング博士が、このほど出版された遺作のエッセイ集の中で、そんな警鐘を鳴らしている。

超人間の誕生と懸念

英ガーディアン本誌米国版などが報じた。ホーキング博士は著書の中で、遺伝子工学に関して、人間に対する遺伝子操作を禁止する法律がおそらく今後制定されるだろうと予測。ただし、記憶力、病気への耐性、寿命といった人間の特徴を改良する誘惑にあらがえない人も出てくるはずで、(高額な施術費用を払える)富裕層は子孫のDNAを改変して能力を高めようとするだろう、と予言している。

このような遺伝子的に改良された「超人間(superhuman)」が登場すると、彼らよりも能力で劣る既存の人類との間で格差が生じ、重大な政治問題になると指摘。超人間と競争できない人類は「絶滅するか、重要でない存在になっていく」と警鐘を鳴らした。代わりに、「加速度的に自己の改良を続ける新たな種が台頭する」との予測を示している。

ホーキング博士はこうした予測の根拠の一例として、2012年に特許申請された遺伝子編集技術「CRISPR(クラスター化規則的間隔占有短鎖パリンドローム反復)-Cas9」を挙げている。これは、ゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することを可能にする技術で、すでに特定の疾病の治療に実用化されているという。

遺作の概要

hawking1019b.jpg

Brief Answers to the Big Questions(John Murray Ltd)

ホーキング博士の遺作は『Brief Answers to the Big Questions』(大きな疑問への簡潔な回答)と題され、英出版社ジョン・マレーから今月16日に刊行された。同博士が生前、科学者や政治的指導者、起業家や経営者らから繰り返し尋ねられた疑問に対し、回答をまとめたものだという。

疑問は10項目あり、「神は存在するか」「万物はどのように始まったか」「未来は予測できるか」「ブラックホールの中には何があるか」「宇宙に他の知的生命体はいるか」「人工知能は人類よりも賢くなるか」「人類はどのように未来を実現すべきか」「人類は地球で生き残るのか」「人類は宇宙に入植すべきか」「タイムトラベルは実現するか」となっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過去最高水準に
  • 4
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中