最新記事

中国

オウム死刑執行を支持する中国政府の狙いは、法輪功弾圧の正当化か

2018年7月19日(木)17時00分
我妻伊都

小額紙幣に法輪功の理念を勝手に印字するなど、法輪功の活動は密かに活動が続けられている

<中国政府は、オウム真理教の元幹部7人の死刑執行を支持することで、法輪功への弾圧の正当化とその継続への意志を示した>

7月6日、麻原彰晃(松本智津夫)らオウム真理教の元幹部7人の死刑執行を受けて、中国国営「新華社」もオウムが起こした事件について詳しく取り上げるなど高い関心を示した。

中国外務省の定例記者会見で、「邪教勢力が罪のない市民を死傷させた凶悪事件を中国は一貫して非難してきた」と、邪教という言葉を用いて言及している。中国においてここでの「邪教」は「法輪功」を指す。

今回、中国が日本政府を支持するかのような声明を出した背景には、中国が江沢民時代の1999年に邪教認定して禁止、弾圧を続ける法輪功政策の正当性を国内外へアピールする狙いがあるとみられる。

1999年に邪教と認定された法輪功

法輪功(現在の正式名称は法輪大法)は、中国の伝統的な仏教修練法を取り入れた健康促進の気功法として1992年に誕生し、実践者(学習者と呼ぶ)を増やしていく。当初は、中国政府も容認し、推奨していたが、学習者が当時の中国共産党員を上回る7000万人を超えたことやカルト的な要素が問題視され1999年に邪教と認定されて活動を禁止されている。

法輪功の創始者である李洪志氏は、渡米中だっため拘束をまぬがれ、現在もそのままアメリカで活動している。そして、中国政府による邪教認定後の法輪功や学習者への取り締まりが人権弾圧だ、と人権団体から度々非難を受ける事態が続いている。

法輪功は中国国内での活動を禁止されたため、活動拠点を海外へ移し、日本ではNPO法人として活動したり、アメリカで「大紀元」や「唐人テレビ」といったメディアを創設し、中国の外から中国政府を非難する活動を展開している。

駐日本中国大使館は、「法輪功」とは何か、というページを設け、以下のように名指しで法輪功=オウム真理教として注意を呼びかけている。
「「法輪功」とは、いったい何か。一口で言えば、中国の「オウム真理教」です。その教祖は現在アメリカにいる李洪志という人物です。「法輪功」も「オウム真理教」も他のカルト集団と同様ですが、教義や教祖への絶対服従と絶対崇拝を要求し、信者にマインドコントロールを施すのです」

wagatuma01.png

法輪功は中国のオウム真理教だと説明する駐日本中国大使館のホームページ

法輪功が話題に出ることはまずない

現在、中国国内では一切活動できないので、創始者李氏の出身である吉林省でも法輪功が話題に出ることはまずない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

カナダ首相、米関税に対抗措置講じると表明 3日にも

ビジネス

米、中国からの小包関税免除廃止 トランプ氏が大統領

ワールド

トランプ氏支持率2期目で最低の43%、関税や情報管

ワールド

日本の相互関税24%、トランプ氏コメに言及 安倍元
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中